かねてから親しくさせていただいている日本エコツーリズムセンターの広瀬敏通さんが、8月20日の朝日新聞の「私の視点×4」で、「エコツアー 推進へ法律の弾力的運用を」と題しての意見を発表されているのを、興味深く読ませていただいた。
そのなかで、自然学校の活動が、縦割りの法律の網の中で、思うようにうごけない規制の網の中にあることを指摘されていた。
このことは、私が主張しているグリーンツーリズムについてもいえ、せっかく、ドイツの農村休暇法に似た「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律 」を制定しても、実質、長年、機能せず、ようやく、構造特区構想によって蘇ったのと似た展開をしているのに気づく。
もっとも、広瀬さんに言わせると、この構造特区による農家民宿にまつわる規制緩和も、農家民宿の認可を取った施設のみに限られ、自然学校には及ばないとの限界もあるようである。
せっかく、推進のための法律を作っても、その制度設計が独りよがりであっては、このように、仏作って魂入れずの状態が続くのだろう。
広瀬さんの提言の中で言われていることなのだが、せっかく、鳴り物入りで作ったエコツーリズム推進法に基づくエコツーリズム推進協議会の各地域での設置状況の進展が遅いのだという。
なるほど、”エコツーリズム推進協議会”という名前がついている会は、あるが、エコツーリズム推進法第5条第1項に基づく推進協議会は、昨日認定第1号(平成20年4月1日の法律施行以来、1年半かかって、ようやく第1号とは–)となつた埼玉県の飯能市(飯能市エコツーリズム推進協議会)を除いては、まだまだのようである。
私は、このエコツーリズム推進法の問題点については、かねてから指摘しておいたことなのだが、やはり、一番の欠点は、県の役割をそのスキームの中にいれていないことが、エコツーリズム推進協議会の設置の歩みを遅らせている最大の原因であると思う。
これは、環境関係ではないが、土地改良などの推進協議会などでの私の経験から言えることだが、県を絡ませないと、市町村がなかなか動きにくいという地域の暗黙の事情があるということだ。
つまり、環境資源を持つ地元にとっては、国のお墨付きよりも、まず、県のお墨付きなのである。
これがあれば、地元の市町村長や市町村議員もまとまるし、ちょっとした調査費程度なら、市や県が何とかしてくれる、そんな力関係なのだ。
その辺の地元における微妙な力関係を無視して、いわば、環境省直轄での市町村協議会のスキームを作ってしまったことが、最大の原因なのだろう。
それと、このエコツーリズム推進法には、あまりに環境資源への立ち入り規正法的な色彩が強すぎ、環境資源を持つ地元にとってのインセンティブ的には、箔をつけるという以外には、ほとんどメリットがないことも、地元が動きにくい一因なのだろう。
いわば環境省内のレンジャー一派が考えたような独りよがり的なスキームが、随所に垣間見られる。
地元振興のお題目は掲げていても、実質的には、環境資源を有する地元の換金回路構築に資するスキームがほとんどないのである。
特定事業者の活動が、地元にとっての換金回路の構築と一体のものでなければならないのではなかろうか。
今回の総選挙で、これらのエコツーリズム推進法制定の旗振りをされた自民党の先生方は、皆、落選されてしまった。
この際、エコツーリズム推進法の見直すべき点は、いち早く見直し、もっとインセンティブの伴った内閣法に格上げ?し、実質、機能しうる推進法に衣替えしたほうがいいように、私には、思える。
備考 エコツーリズムに関する私の関係ブログ記事
「コモンズ的視点を欠いたエコ・ツーリズムでいいのか?」
「エコツーリズム推進法は, 出来たけど。」
「エコツーリズム推進基本方針(案)に関する意見」
「私のパブリックコメントで、エコツーリズム推進法施行規則が変わった。」