まあ、これまでの為替介入は、
①外国為替資金特別会計で、国債の一種である政府短期証券(外国為替資金証券、4つあるFB(Financing Bill)のうちの1つ)を発行
②金融市場から円資金を借りる(もっとも、2003年12月には、日銀による外国為替資金特別会計への直接融資がなされたこともある。)
③日銀を通じて外国為替市場で、その円資金をドルと両替する。
④それで得たドルで、政府は米国債を買って運用する。
⑤結果、米国債と、政府短期証券(外国為替資金証券)とは、両建ての関係となる。
というものだったが、これを「日銀による米国債直接購入」となると、上記のスキームでの①②をすっ飛ばすバイパスが生まれる。
でも、「ドルと両替し米国債を買う」ということで、結果的にはドルをささえるということになり、実質、円高ドル安是正の効果は生まれうる。
ただ、⑤の両建て関係は、今度は、「米国債⇔日銀信用創造」という関係になる。
「国債のマネタイズ(貨幣化)」という言葉があるが、ここでは、米国債が日本のマネタリー・ベースと直結してしまうという意味で、「米国債の日本の貨幣化」であるともいえる。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストによれば、民主党政権下での特別会計の改革に絡んで、従来スキームによる為替介入が困難になった場合などには、この「日銀による米国債直接購入」の可能性はありうるという。
参照「日銀サーベイ」円高が新たな脅威-株安との連鎖なら追加緩和検討も 」
2003年5月にバーナンキさんが、日本に講演(日本金融学会60周年記念大会の特別講演)に見えられたとき、私は、次のようなことを自分の掲示板に書いていた。
(こちら『笹山登生の掲示板その3』の「4557 昨日、東京で行われたBen S. Bernankeさんの講演 2003/06/01(Sun) 」ご参照)
「インタゲ派待望のバーナンキさんの講演のようだったが、それとは別に、いま日米で、日銀による定期的な米国債の買い、という日米両国の利害に叶うバーター政策がとられるのではないかと、ささやかれている。
米国は減税に伴い、6.4兆ドルの国債発行限度を引き上げ、増発分のコンスタントな引き受け手を必要としており、日銀による米国債の定期的購入は、量的金融緩和、円安誘導を支援する政策として、日米双方の利害にかなった政策として見られている。」
まあ、例の今年の中川昭一前財務大臣の泥酔記者会見は、アメリカ側からの米国債押し付け売り込みに対する巧妙なカモフラージュであった、などとするまことしやかな憶測もあるくらいだから、まさに、今度は、とって返して、かつてのバーナンキ理論を地で行くスキームを、今、日銀は実行しようとしているのかもしれない。
このときの バーナンキさんの、背理法にもとづく日本建て直し論は、次のサイト
「”Some Thoughts on Macroeconomic Policy in Japan”」
や、それ以前の
「Japanese Monetary Policy: A Case of Self-Induced Paralysis?」で見ることができる。
だったら、いっそのこと、日銀は、無制限の信用創造をして、日本国債を蛸足的に購入(日銀による期間2年以内の国債無制限の購入、もっとも、こちらのほうは米国債と違って財政法第5条の制約がある。)することだって、考えられるのだが。
(そういえば、今度政権を担われる民主党さんには、サムライ米国債(円建て米国債)発行論者が、かつて、おられたような?)
このことは、一方で、まさに、かつてのインタゲ派待望の、日本のデフレ対策にも、寄与することになりうる。
ニッポン銀行は、まさに、今、ドル引き換えのための日銀紙幣印刷の輪転機を回し始め、、永遠に、自動販売機に円をつぎ込み、取り出し口からは、米国債や日本国債が出てくるマシーンは、まさに動きだし始めようとしている。
株式会社日本銀行は、復権を掛けて、バーナンキ理論を頼りに、最後の掛けに出た、
日銀は、ソブリン債と信用創造との抱き合い心中に踏みきった、
とみるべきなんでしょうか?
これについては、「これでは、日銀が「TOKYO連銀」になってしまう。」との揶揄もある。
それにしても、
「日銀が永遠に信用創造して米国債を買い続ける限り、米国債は、デフォルトにはなりえない。→米国債がデフォルトにならない限り、日本国債はデフォルトにはなりえない。→日本国債がデフォルトになりえない限り、日銀信用創造は、是認される。」
との永遠の結ぼれのスキームは、可能なんだろうか?
上記冒頭の写真は、ドル紙幣にバーナンキの写真をかぶせた揶揄だが、今度は、福沢諭吉にバーナンキの顔をかぶせた和洋折衷の一万円札の写真が登場するのかもしれない。
鳩山由紀夫さんも、いまさら「アジア共通通貨の構築」なんて、寝ぼけたこと、いっておられないんじゃないでしょうかね?
参考
バーナンキの背理法の見解の部分
「この見解に反論するには、私が以前、述べた次の見解にもとずく、背理法による展開を適用できる。
すなわち、紙幣の発行は、価格に対して間違いなく影響を及ぼすし、さもなくば、紙幣の印刷は、無限の購買力を生み出しうるであろう。」
To rebut this view, one can apply a reductio ad absurdum argument, based on my earlier observation that money issuance must affect prices, else printing money will create infinite purchasing power.
上記のバーナンキの理論に背理法を適用すると、次のようになりうる。
前提1.「紙幣の発行は、価格に対して間違いなく影響を及ぼす。」
前提2.「紙幣の印刷は、無限の購買力を生み出しうる。」
そこで
「紙幣の印刷は、無限の購買力を生み出しえない」
と仮定する.
すると
「紙幣の発行は、価格に対して間違いなく影響を及ぼさない」
ことが導かれる.
これは
「紙幣の発行は、価格に対して間違いなく影響を及ぼす」
ことと矛盾する.
したがって
「紙幣の印刷は、無限の購買力を生み出しうる」
つまり、「紙幣の発行は、価格に対して間違いなく影響を及ぼす」ということを前段に持ってくると、両者の前提をつなぎうる、誰しも、まったく否定できないパラメーターとも言うべき「紙幣の発行すなわち、紙幣の印刷である」という事実がある限り、後段を否定してみることによって、「紙幣の発行≠紙幣の印刷」ということになってしまうため、後段の、やや、肯定か否定かグレーゾーンの前提である「紙幣の印刷は、無限の購買力を生み出しうる」の正しさが立証できる、というわけである。