9月3-4日のインドのWTO非公式閣僚会合で2010年でのドーハラウンド決着にむけたロードマップ合意への大方のコンセンサスを経て、それをうけて、今週9月14日よりジュネーブではじまった30カ国による政府高官会議だが、ここにきて、暗雲が立ち込める状況となってきた。
来週のアメリカ・ピッツバーグでのG20会議では、サミット共同宣言に、ドーハラウンド2010年中決着を意味する何らかの文言が盛り込まれるはずである。
WTOラミー事務局長は、火曜日に、グリーンルームでの会合に主要国や交渉グループを招いて、ロードマップへの合意を取り付けようとした。
また、水曜日には、農業品グループと工業品グループとの並行的な論議の場を設けようとした。
木曜日には、Eルームにおいて、36カ国の会合を開き、金曜日には、高級レベル会合を開いた。
発展途上国は、オープンな包括的な話し合いよりは、二国間または多国間での補足的な話し合いの元に、ボトムアップでの話し合いを希望した。
ラミー事務局長が招いた国は、オーストラリア、ブラジル、中国、EU、インド、日本、アメリカ、カナダ、インドネシア、ニュージーランド、マレーシア、メキシコ、南アフリカの各国のほか、その他の交渉グループの代表などである。
18日の高級事務レベル会合で、年内の詳細な交渉日程を盛り込んだ「工程表」を正式に取りまとめ、ラミー事務局長は、これをピッバーグでのG20で、2010年中の妥結を実現するため、サミットで報告することになった。
今後、10-12月にかけて、次官級の交渉会合を毎月1週間ずつ集中開催することになる。
このように、工程表の合意については、なるほど精力的な日程ではあるが、しかし、実際は、会議はすれど、といった状況のようである。
問題の争点は、
①特別セーフガード・メカニズム(SSM)
②突然の輸入の急増や価格の低下などをもたらすイベント発生の際に、発展途上国に追加関税を課す方法。関税の簡素化についての方法、これらの国々が、これまで関税にのみに頼ってきた手段にかわって、新しくタリフ・ラインを設定することを許すかどうかの問題
③先進国や発展途上国の双方が、同一商品の割り当てを拡大する代わりに、関税引き下げ競争から守りうるセンシティブ品目の設定、
などである。
一方、非農業品目については、非関税障壁などの問題がある。
これは、とくに、南アフリカ、アルゼンチン、ベネズエラ、などの問題となる。
しかし、これらの交渉に妨げとなりうるのは、昨秋以来、日本も含むいくつかの国において、政権の交代があることである。
特に、アメリカでの大統領交代は、おおきな障害となりうると、発展途上国は、指摘している。
オバマ大統領は、アメリカ国内の医療改革にてこずっており、WTOにまで手が回っていない状況である。
また、つい先日の9月9日に、アメリカ次期WTO大使に、Michael Punke 氏を指名したばかりというのも、各国の心配材料となっているようだ。
なにより懸念されているのは、アメリカと中国との中国製タイヤのアメリカ輸入をめぐる、米中の緊張の激化である。
それと、12月のコペンハーゲン気候変動会議で、アメリカが炭素関税を主張すれば、このことがWTOドーハラウンド合意へ大きなさらなる障害となるかもしれない。