笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2010年1月6日

余った新型H1N1用ワクチン処理に苦慮する各国事情

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama – 5:42 PM

やはり、というか、ここにきて、新型インフルエンザワクチンが、当初見通しよりも、大量に余ることが確定的になってきており、各国は、その大量に余る新型H1N1用ワクチンの処理に一様に頭を痛めているようだ、

日本でも、そのワクチンを大量に余らした責任者の犯人探しがはじまっているようだ。

日本の場合は、
早々と輸入ワクチンを決定した舛添前厚生労働大臣
安全性の確認もそこそこに、海外ワクチンメーカーと契約を結んでしまった長妻現厚生労働大臣
一回接種か二回接種かで、混乱を引き起こした足立厚生労働政務官
日本政府に契約をせかせるばかりで、安全性の確認をせずに、日本の接種対象者に無用の『輸入ワクチン接種への心理的アレルギー』を作ってしまった海外ワクチンメーカー
小規模の医療現場で、使い残しで不評のワクチン大瓶(10ml)化を決定した厚生労働省
そして、何よりも、予想よりも、早く終焉に向かっているH1N1新型インフルエンザウイルス??
などが槍玉の対象に浮かんでくるのだが、海外の動向を見ると、ワクチンあまり現象は、ひとり、日本だけのものではないようだ。

いろいろな動きが世界各国にある。

フランス

まず、フランスだが、こんな事情のようだ。

フランスでも、当初、二回接種のプランで、ワクチンを手当てしたのだが、一回接種ですむとわかったので、その余剰分七千九百万服分(金額にして12億5千万ドル)を他国に売ることにしたという。

また、余剰分の10パーセントは、WHOに寄付するという。

フランスが予定していたのが、九千四百万服分のワクチンだったが、結果は、接種を受けたのが五百万人だったので、大量のワクチンが余ってしまった。

フランスから余剰分ワクチンを買ったのは、カタールで、その量は、30万服分であるという。

そのほか、フランスは、エジプトに対しても、二百万服分を売るという。

さらに、メキシコ、ウクライナも、フランスからのワクチンの販売先になる予定であるという。

ブルガリアは、フランスからの売り込みを拒否したという。

フランスでは、これにとどまらず、5000万服分の注文を製薬会社に対して解約を申し入れているという。

同じように、ドイツやオランダも、余剰分ワクチンは、他国に売ることを、昨年末に決定したという。

ドイツ

ドイツでは、五千万人分が、3月までに余ると見られ、これまで、ドイツ国民でワクチン接種を受けたのは、全国民のたった5パーセントであったという。

ドイツの余剰ワクチンの売り先としては、ウクライナが上がっており、二百二十万服の売却を交渉中であるという。


オランダ

オランダは、一千九百万服の余剰分のうち、二百万服の売り先を確定したという。

スペイン

一方、スペインは、製造元に余剰ワクチンを返せるかどうかについて、交渉中だという。

スイス

スイスは、七百七十万人の国民に対して、千三百万服を用意したが、四百五十万服が余っているという。

これについては、一部を他国に売却、一部をWHOに対して寄付との方針とのことである。

カナダ

カナダでも、ワクチンが余っているようだ。

カナダでは、当初、五千六十万服のワクチンを注文したが、インフルエンザシーズンが終わる4月までに、二千万服が余るという。

カナダでは、ワクチン接種の出足は早く、10月26日時点では国民の46パーセントが接種するという勢いであったが、その後、12月に入り、めっきり、出足が鈍り、生産もとのGlaxoSmithKlineも、出荷をとめている。

なお、カナダでは、妊婦用のワクチンをオーストラリアから、二十万服も輸入しており、トータルでは、金額にして四億二百五十万ドルとなっている。

こちらは、まだ、余剰ワクチンの処理の方向は決まっていないようだ。

第三波に備えるという動きもあるようだ。

というのは、ワクチンのアジュバントの保存期限が三年、抗原(アンチゲン)の保存期限が18ヶ月と長いので、来シーズンにまでもたせうる、という見解も専門家の間ではあるようだ。

ただ、現在の新型がこれまでの季節性に含まれてしまうのか、それとも、新しい変異ウイルスが来シーズン発生するのか、などについての不確定要因が多いため、当局も、方針を打ち出せないでいるようだ。

参考「Excess H1N1 vaccine could be sold, kept in reserve」

日本

日本では、国産ワクチン5400万人分プラス輸入の9900万人分(一回接種換算、当初は二回接種換算で、GSKが3700万人分、ノバルティスファーマが1250万人分、合計4950万人分であった。これが途中で一回接種と変わり、4950×2=9900万人分となった。)=1億5300万人分であり、これが、一部一回接種ともなったことを加えて、インフルエンザ事態が急速に下火になったため、正月の現時点で、現場では、国産ワクチンですら、過剰気味となっているようだ。

これに、来月には、九千九百万服の輸入ワクチン分が加わる。

輸入ワクチンに対しては、さらに『輸入ワクチン・アレルギー』の忌避感が接種対象者に伴うので、ワクチンのいっそうの過剰感が増大するのは必至のようである。

ただ、まあ、日本の輸入ワクチンも、カナダと同様、アジュバントと抗原(アンチゲン)とが、接種段階まで別容器に入っていて、接種の段階で、常温にして混ぜるタイプなので、保存期限に余裕があることが幸いしているのだが、しかし、それが保存可能としても、来シーズンでのウイルスのタイプや、季節性ウイルスの変異の状況がわからないので、それが使用できるかどうかは、誰しもわからないということなのだろう。

WHOでは、ワクチン余剰国に対して、WHOを通じての貧困国への寄付を呼びかけている。

その対象国は、次のとおり
オーストラリア、ベルギー、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、スロベニア、スウェーデン、スイス、イギリス、日本、アメリカ、

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