日本銀行は、2024年3月19日の金融政策決定会合で、世界で最後のマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを決定した。
新たな政策金利は無担保コール翌日物レートを目標とし、0から-0.1%に誘導する。
これにより、2013年4月以来続いていた大規模な金融緩和政策が転換点を迎えた。
イールドカーブコントロール(YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入停止も決定された。
植田和男総裁は、物価見通しが上振れるリスクが高まった場合は政策変更の理由になると述べ、基調的な物価上昇率が2%を下回っている間は緩和的環境が続くが、物価が上昇すれば緩和の程度は縮小していくとも述べた
総裁は、短期金利を主たる政策金利とする運営は他の中央銀行と同様の設定になると説明し、2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったものの、予想物価上昇率から見るとまだ2%には距離があると指摘。
そのギャップに着目することが重要だと語った。
また、大規模緩和の役割が終了したとし、今後の金融政策運営に関しては、引き続き2%の物価安定の目標の下で適切に金融政策を運営すると指摘した
植田総裁は、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、展望リポートの見通し期間終盤にかけて、2%目標の実現が見通せる状況に至ったと判断したと説明。
マイナス金利政策やYCCなどの大規模な金融緩和はその役割を果たしたとしている。
また、預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとは見ていないとし、先行きも緩和的な環境が経済・物価をしっかりと支える方向で作用するとの見方を示した
岡崎康平シニアエコノミストは、フォワードガイダンスおよびオーバーシュート型コミットメントが落とされたことから、少しタカ派的な印象を受ける内容と指摘。
足元の円安や賃上げ動向を踏まえると、2025年前半ぐらいまでインフレ率は2%を超えるような状況が続くとし、10月会合での0.25ポイントの追加利上げを予想した
日銀の政策正常化への一歩として、市場の関心は今後の利上げや国債購入のペースに移ることが予想される。
総裁が会見で緩和的環境の維持を強調しつつも、物価の動向次第では追加利上げの可能性もあり得ることを示唆したことで、4月公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示される物価見通しへの注目が高まりそうだ
以下は今日の日銀総裁記者会見のエッセンスである。
金融政策の転換
植田日銀総裁は、2%の物価安定目標が持続的に実現できる状況に至ったと判断し、これまでの大規模な金融緩和策を転換することを表明した。
賃金と物価の好循環確認
総裁は、今年の春闘での賃上げ実現の可能性が高く、企業からのヒアリングでも賃上げの動きが確認されたことから、賃金と物価の好循環が強まっていると判断しました。中小企業の賃上げは弱いものの、全体としてはある程度の姿になると見込んでいる。
当面は緩和的な金融環境が継続
ただし、総裁は当面は緩和的な金融環境が継続すると述べました。短期金利の上昇は0.1%程度にとどまり、長期金利が急上昇する場合は国債買い入れを機動的に増額する方針です。預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとは見ていない。
金利水準は市場が決める
国債買い入れは当面これまでと同程度の額で継続しますが、金利水準は市場が決めるものとしている。
ただし、金利が急激に上昇する場合はオペを打つとしている。
利上げのペースは緩やか
利上げのペースは経済・物価の見通しによるが、現時点の見通しでは急激な上昇は避けられるとしている。
物価見通しが上振れるか、上振れリスクが高まれば、政策変更の理由になるとしている。
異次元緩和の役割は終了
総裁は「異次元の緩和は一応役割を果たした」と述べ、今後はバランスシート縮小を視野に入れるとしている。
ただし、過去の異次元緩和の「遺産」は当面残り続けるとの見解を示した。
以上