2014年9月30日
環境省は岩手・宮城の震災瓦礫を広域処理する基準として、以下の四つの条件をあげている。
①岩手・宮城の災害廃棄物に限り広域処理とし、福島の災害廃棄物は広域処理の対象としない。
②原則として放射性セシウムが検出されない瓦礫とするが、検出の場合は焼却前1kg当たり240―480Bq以下のものに限る。
③広域処理の結果生じた焼却場の焼却灰は、1kgあたり8000ベクレルまでは全国において埋立処分できる。
④焼却場におけるバグフィルターはガス化したセシウムのほぼ100%を除去できる。
そこで、いかにも唐突に現れてきたように見える③の「1kgあたり8000ベクレルまでは全国において埋立処分できる。」との基準は、いかなる経緯をもって、環境省の広域処理の条件におりこまれてきたのだろうか?
3.11以降の、これに関する動きを、以下、時系列的に記載する。
2011年5月12日
昨年5月12日に国土交通省から福島県に「福島県内の下水処理副次産物の当面の取扱いに関する考え方について」との文書が出されたが、まだ、この時点ではこの文書に「8000ベクレル/kg以下」の文言は入っていない。
2011年6月3日
2012年6月3日に原子力安全委員会から「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の. 処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」との文書が出された。
ここにおいても「8000ベクレル/kg以下」の文言はまだ入っていない。
しかし、次のような記述がある。
「したがって、今回の事故の影響を受けた廃棄物を処分する場合においても、採用された処分方法に応じたシナリオを設定し、適切な評価を行い、その結果が「第二種放射性廃棄物埋設の事業に関する安全審査の基本的考え方」に示したそれぞれのシナリオに対する「めやす」を満足していることが示されれば、管理を終了しても安全が確保されることについての科学的根拠があると判断できるものと考える。」
つまり、今後の安全基準の考え方は、平成 22 年 8月 9日、原子力安全委員会決定の「第二種廃棄物埋設の事業に関する安全審査基本的考え方」をベースに考えるというものである。
なお、参考にすべき過去の文書として、次のものを挙げている。
①「放射線防護に関する助言基本的考え方ついて」 (平成 23 年 5月 19 日、原子力安全委員会 )
②「放射性廃棄物処分の安全規制における共通的な重要事項ついて 」(平成 16 年 6月 10 日、原子力安全委員会了承 )
③「第二種廃棄物埋設の事業に関する安全審査基本的考え方」(平成 22 年 8月 9日、原子力安全委員会決定 )
④「余裕深度処分の管理期間終了以後における安全評価関す考え方」(平成 22 年 4月 1日、原子力安全委員会了承 )
⑤「余裕深度処分の管理期間終了以後における安全評価関す技術資料」(平成 22 年 8月 5日、原子力安全委員会 放射性廃棄物廃止措置専門部)
2011年6月16日
「1kgあたり8000ベクレルまでは制限なしに埋め立て可能」の語句が、3.11以降、最初に現れたのは2012年6月16日原子力災害対策本部の「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」である。
ここにおいては以下のように書かれている。
「下記の表に従って、をとることを前提に、通常時に脱水汚泥等を埋立処分している管理型処分場の埋立敷地内等に仮置きすることができる。なお、固化、希釈等により、脱水汚泥等の134Cs及び137Csの合計濃度が低下した場合には、低下後の濃度で評価する」
そして、その下に「表」として次のように書かれている。
「134Cs及び137Csの合計-8,000Bq/kg以下 敷地境界からの距離の目安–制限なし」
つまり、セシウム134とセシウム137との合計のベクレル値が8,000Bq/kg以下の場合には、通常時に脱水汚泥等を埋立処分している管理型処分場の埋立敷地内等に仮置きしても、敷地境界からの距離をとる必要が無い、と書いてあるのだ。
そして、付記として、次のような記述がある。
放射性セシウムの濃度が高い脱水汚泥(目安として500,000Bq/kg1を超えるもの)の数値「500,000Bq/kg1を超えるもの」の根拠は「原子力安全委員会の考え方を踏まえた既存の廃棄物に関する被ばく評価である「放射線障害防止法へのクリアランス制度の導入に向けた技術的検討について」(文部科学省 放射線安全規制検討会クリアランス技術検討ワーキンググループ、平成22年1月以下「RIクリアランス報告書」という。)を基に評価」
「134Cs及び137Csの合計」と「敷地境界からの距離の目安」との関係の根拠は「「低レベル放射性固体廃棄物の埋設処分に係る放射能濃度上限値について」(平成19年5月21日原子力安全委員会)に基づき、操業中のスカイシャインの影響を評価した。」
とある。
2011年6月19日
2012年6月19日に第三回災害廃棄物安全評価検討会が開かれ、ここにおいては以下のような資料が提出された。
①「災害廃棄物の放射能濃度の推定方法について」(原子力安全基盤機構 廃棄物燃料輸送安全部)
②「福島県の浜通り及び中通り地方(避難区域及び計画的避難区域を除く)の災害廃棄物の処理・処分における放射性物質による影響の評価について」(日本原子力研究開発機構安全研究センター)
③「放射性物質により汚染されたおそれのある災害廃棄物の処理の方針」(災害廃棄物安全評価検討会)
④「福島県内の焼却施設の設備状況について」
⑤「焼却施設周辺及び煙道排ガス調査結果」
⑥「一般廃棄物焼却施設の排ガス処理装置におけるCs,Srの除去挙動(京都大学高岡昌輝)」
⑦「福島県内の放射性物質に汚染されたおそれのある廃棄物の処理にかかる調査について」
⑧「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」(2011年6月16日原子力災害対策本部) 6月16日の資料と同じもの
⑨「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響をうけた廃棄物の処理処分に関する安全確保の当面の考え方について」(平成23年6月3日原子力安全委員会)
その他二点
この2011年6月19日に第三回災害廃棄物安全評価検討会において「1kgあたり8000ベクレル」に言及していたのは、このうちの③「放射性物質により汚染されたおそれのある災害廃棄物の処理の方針」(災害廃棄物安全評価検討会)であり、ここには以下のように書いてある。
「3.焼却に伴って発生する主灰及び飛灰の取り扱いについて
(1)主灰
放射性セシウム濃度(セシウム134とセシウム137の合計値。以下同じ)が8000Bq/kg以下である主灰は、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋め立て処分を可能とする。ここで放射性セシウム濃度の目安8000Bq/kgは埋め立て作業者の安全も確保される濃度レベルであり、原子力災害対策本部に書いて別途検討された上下水処理等副次産物の取り扱いとおなじである。」
「放射性セシウム濃度が8000Bq/kgを超える場合は、埋め立て処分するのではなく、埋め立てられた主灰中の放射性セシウムの挙動を適切に把握し、国によって処分の安全性が確認されるまでの間、一時保管とすることが適当である。」
「(2)飛灰
集塵機から排出される飛灰派、主灰以上に放射性セシウムが濃縮されやすい。また、飛灰に含まれる放射セシウムは水に溶出しやすいという報告がある。このため、飛灰については、放射性セ氏受け濃度が8000Bq/kgを超える主灰と同様に、国によって処分の安全性が確認されるまでの間、一時保管とすることが適当であり。100000Bq/kgを超える場合には、適切に放射線を遮へいできる施設で保管することが望ましい」
「4.不燃物等の直接埋め立てについて
不燃物等の災害廃棄物をそのまま又は破砕して安全に埋め立て処分することが可能である。この場合の埋め立て処分の方法や跡地の利用にかなしては8000Bq/kg以下の主灰の場合と同様である。」
「(注)飛灰及び8000Bq/kgを超える主灰の一時保管について
「表」として次のように書かれている。
「134Cs及び137Csの合計-8,000Bq/kg以下 敷地境界からの距離の目安–制限なし」 」
なお「脱水汚泥等の処理、輸送、保管及び処分について」について、「処理等を行う作業者が受ける線量についても可能な限り1mSv/年を超えないことが望ましいが、比較的高い放射能濃度の物を取り扱う工程では、電離放射線障害防止規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第四十一号)を遵守する等により、適切に作業者の受ける放射線の量の管理を行う必要がある。」とある。
2011年6月23日
その後、環境省は2011年6月23日に「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」との文書を出した。
ここにおいては、「1kgあたり8000ベクレル」については以下のように書かれている。
「(1)主灰
放射性セシウム濃度(セシウム134とセシウム137の合計値。以下同じ。)が8,000Bq/kg以下である主灰は、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋立処分を可能とする。ここで放射性セシウム濃度の目安8,000Bq/kgは、埋立作業者の安全も確保される濃度レベルであり、原子力災害対策本部において別途検討された上下水処理等副次産物の取扱いと同じである。」
「放射性セシウム濃度が8,000Bq/kgを超える場合は、埋立処分するのではなく、埋め立てられた主灰中の放射性セシウムの挙動を適切に把握し、国によって処分の安全性が確認されるまでの間、一時保管とすることが適当である。」
「、飛灰については、放射性セシウム濃度が8,000 Bq/kgを超える主灰と同様に、国によって処分の安全性が確認されるまでの間、一時保管とすることが適当であり、100,000Bq/kgを超える場合には、適切に放射線を遮へいできる施設で保管することが望ましい。」
「。溶融スラグについても一時保管とすることを原則とするが、8,000 Bq/kg以下であることが確認された場合は埋立処分が可能である。」
「不燃物等の災害廃棄物をそのまま又は破砕して安全に埋立処分することが可能である。この場合の埋立処分の方法や跡地の利用に関しては、8,000 Bq/kg以下の主灰の場合と同様である。」
「(1)空間線量率が比較的低い場合
仮置場の災害廃棄物から1m地点での空間線量率が低い場合は、災害廃棄物の放射性セシウム濃度が比較的低く、ばらつきも小さい。例えば、空間線量率が0.2μSv/h程度の仮置場では、災害廃棄物の放射性セシウム濃度は概ね800Bq/kg以下であった。
災害廃棄物だけを焼却した場合、主灰の放射性セシウム濃度は災害廃棄物のそれと比較して最大でも10倍程度と考えられるので、主灰の平均的な放射性セシウム濃度は8,000Bq/kg以下となる可能性が高い。生活系の廃棄物などと混焼した場合は、さらに濃度が低くなる可能性がある。」
「(2)埋立処分における作業者への影響
8,000 Bq/kg(8 Bq/g)の廃棄物をそのまま埋立処分する場合の作業者の被ばく線量は0.78mSv/yと計算され、原子力安全委員会による作業者の目安である1 mSv/yを下回っている。このように、8,000 Bq/kgは作業者の安全も確保される濃度レベルであり、原子力災害対策本部において別途検討された上下水処理等副次産物の取扱いと同じである。」
「(参考3) 安全評価のための計算の例
(2)埋立処分における作業者への影響
8,000 Bq/kg(8 Bq/g)の廃棄物をそのまま埋立処分する場合の作業者の被ばく線量は0.78mSv/yと計算され、原子力安全委員会による作業者の目安である1 mSv/yを下回っている。このように、8,000 Bq/kgは作業者の安全も確保される濃度レベルであり、原子力災害対策本部において別途検討された上下水処理等副次産物の取扱いと同じである。
なお、この値は、1日8時間、年間250日の労働時間のうち半分の時間を廃棄物のそばで作業すること、1日の作業の終了時の覆土である即日覆土を行わず、中間覆土のみ行うことを仮定して計算されている。」
「(参考5) 一時保管における居住地域等の敷地境界からの距離
下表の数字に従えば十分に安全なので、参考として示すこととする。
表
134Cs及び137Csの合計-8,000Bq/kg以下 敷地境界からの距離の目安–制限なし」
2011年6月25日
6月25日(土曜日)、東京都の江戸川清掃工場の焼却灰等から放射性セシウムを検出
セシウム134とセシウム137の合計は
主灰592ベクレル/kg(Cs134=280 Cs137=312) 飛灰9740ベクレル/kg(Cs134=4700 Cs137=5040)
飛灰からセシウム134とセシウム137の合計8,000Bq/kg以上の9740ベクレル/kg(が検出
「江戸川清掃工場における焼却灰等からの放射性物質の検出について」
2011年6月28日
江戸川清掃工場からの8000ベクレル/kgを超える飛灰(9740ベクレル/kg)が検出されたことをうけ。2012年6月28日に環境省が関係都県に対して「一般廃棄物焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取扱いについて」を出した。
この中では「8000ベクレル以下」については下記のように書かれている。
「東京都の一般廃棄物焼却施設の飛灰から8,000Bq/kg を超える放射性セシウム(セシウム134 及びセシウム137)が検出されたことから、東北地方及び関東地方等の一般廃棄物焼却施設における焼却灰(主灰及び飛灰)の測定を要請するとともに、当面の取扱いについてお知らせする。」
「(1)焼却灰の測定
すべての一般廃棄物焼却施設の飛灰に含まれる放射性セシウムの濃度を測定する。参考として、同時に主灰についても測定することが望ましい。なお、飛灰が8,000Bq/kg を超えるおそれがある場合には、主灰の測定を行う。また、測定結果が8,000Bq/kg を超えた場合、又は8,000Bq/kg に近い値となった場合は、一定の間隔(1 ヶ月程度)をおいて、測定を継続することが望ましい。」
「(2)当面の取扱い
ア 8,000Bq/kg を超える主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に場所を定めて、一時保管する。一時保管の方法は、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(平成23 年6月23 日)に準拠する。
イ 8,000Bq/kg 以下の主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に、埋立処分する。念のための措置として、可能な限り、飛灰と主灰の埋立場所を分け、それぞれの埋立場所が特定できるように措置する。
ウ また、8,000Bq/kg を超える主灰又は飛灰が確認された場合は、一時保管場所付近での空間線量率及び埋立地の排水のモニタリングを実施する。」
「(3)作業者の安全確保
一般廃棄物に放射性セシウムが含まれている場合、焼却に伴い、主灰又は飛灰に濃縮されるので、その濃度レベルによっては主灰又は飛灰を取り扱う作業者の安全について注意が必要となる場合がある。その目安として次のふたつがある。
ア.「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」において、作業者の安全も確保されるレベルとして示した8,000Bq/kg
8,000Bq/kg を超える場合には、埋立作業に当たってできるだけ頻繁に覆土を行うことが望ましい。また、10,000Bq/kg を超える場合には、電離則に従って作業者の安全を確保することとする。」
2011年7月14日
2011年7月14日に第四回災害廃棄物安全評価検討会が開かれた。
ここにおいて大迫委員から次のような意見が述べられた。
「焼却シナリオの説明の使い方なんですが、ダブルスタンダードに今なっているんじゃないかということを申し上げたくて、この被曝のシナリオ評価に関しては、例えば8,000Bq/m3を決めたときに、埋立作業の作業者の被曝を考えて数値を決めているわけですね。一方で焼却は、先ほどの線量限度の告示ということで、原子炉で使われている数字がメルクマールになって、先ほどの20Bq/m3、30Bq/m3という数値でもって判断をするというような、説明の方向にもなってきているわけです」
また、井口委員から次のような意見が述べられた。
「今回測定された部分の災害廃棄物の置き場については、もう8,000Bq/kgを超えていないというのが確認できたのですが、今後、例えば、よりセシウム濃度の高い地域、避難区域とか、そこら辺のところの評価をする場合に、やはりこれがある程度生きてくるのではないかと思うので、そうしたときに、もう尐し妥当な線を引いておいたほうがよろしいのではないかと思う次第です。あまりにも過剰に評価して、後でいろいろ計画を立てる場合に無駄なことをやってもしようがないという気がするので、今回のデータをもっとうまく生かして、よりもっともらしい評価値をもう一度検討されてはいかがかという、そういう提案です。」
企画課長から次のようなとりまとめがあった。
「個々に条件が異なる、埋め立て処分された場所、いろいろ条件が異なるわけでありまして、そういったところで長期的な管理が必要になるということでございますので、現時点では8,000Bq/kgを超えるものについては、埋め立て処分するということではなくて、国によって処分の安全性が確認されるまでの間は一時保管とするという、こういう考え方になっています。ここで8,000Bq/kgというのは、埋め立て作業者の安全も確保されるレベルと、こういう説明になっているわけです。」
「8,000Bq/kg以下のものに関しても、今は、土壌層を下に敷いて、即日覆土というような形の対応であり、水を入れる・入れないというところは、若干、そこら辺の考え方がまだ十分整理されていない。そういったこともぜひ、ちゃんと認識した上で検討するべきかと思います。」
参考「当日の議事録」
2011年8月10日
2011年8月10日に第五回災害廃棄物安全評価検討会が開かれ、「災害廃棄物の広域処理の推進について」(資料7.ガイドライン)が了承された。
2011年8月11日
2011年8月11日、環境省から都道府県に対して「東日本大震災により生じた災害廃棄物の
広域処理の推進に係るガイドラインについて」がだされ「災害廃棄物の広域処理の推進について
(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン)」が送付された。
この中で「8000ベクレル以下」については次の記述がある。
「放射性セシウム濃度(セシウム134とセシウム137の合計値。以下同じ)が8,000Bq/kg以下である主灰は、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋立処分を可能とする。ここで放射性セシウム濃度の目安8,000Bq/kgは、埋立作業者の安全も確保される濃度レベルである。」
2011年8月27日
2012年8月27日に第6回災害廃棄物安全評価検討会が開かれ、「一般廃棄物処理施設における放射性物質に汚染されたおそれのある廃棄物の処理について」が提出され了解され、8月29日に同様の文書「一般廃棄物処理施設における放射性物質に汚染されたおそれのある廃棄物の処理について」が環境省から各都道府県廃棄物行政主管部(局)長宛、出された。
この中で「8000ベクレル/kg」については次のように書かれている。
「平成23年6月28日付け「一般廃棄物焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取扱い」(以下「焼却灰の取扱方針」という。)において、東北地方及び関東地方等の16都県に対し、一般廃棄物処理施設における焼却灰の測定及び当面の取扱いについてお知らせしたところです。
これに関連して、16都県における焼却灰中の放射性セシウム濃度の測定結果を整理した上で、一般廃棄物処理施設における放射性物質に汚染されたおそれのある廃棄物の処理について、処理における安全性の考え方や処理施設におけるモニタリングの方法等について、別添のとおり取りまとめました。
この内容については、8月27日に開催した災害廃棄物安全評価検討会において御検討いただき、廃棄物処理システムの積極的な活用により、身近な生活環境中にある放射性物質を速やかにできる限り除去することが人の健康へのリスクを軽減する上で有効との考え方や、これを踏まえて、8,000Bq/kg以下の焼却灰等の速やかな処理を促進することが具体的な対応として必要との方針が了解されました。」
2011年8月31日
2011年8月31日に環境省から「8000Bq/kg を超え100,000Bq/kg 以下の焼却灰等の処分方法に関する方針」との文書が都道府県・政令市宛出された。
このなかで「8000ベクレル/kg」については、次の記述がある。
「放射性セシウム濃度が8,000 Bq/kg 以下の廃棄物をそのまま埋立処分する場合の作業員の被ばく線量は、原子力安全委員会による作業員の目安である年間1mSv を下回っている。このように、8,000 Bq/kg は作業員の安全も確保される濃度レベルである(環境省「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」参考)」
2011年9月25日
2011年9月25日に第7回災害廃棄物安全評価委員会が開催され「一般廃棄物焼却施設から排出される放射性セシウムを含む焼却灰の処理について(今後の進め方について)」との資料が提出され、了承され、2011年9月28日に、環境省から同様の文書「一般廃棄物焼却施設から排出される放射性セシウムを含む焼却灰の処理について(今後の進め方)」が都道府県宛に出された。た。
この中で「8000ベクレル/kg」については、次の記述がある。
「一般廃棄物焼却施設の焼却灰の測定を要請した16都県に対して、8,000Bq/kg以下の焼却灰等の処理の実態等について追加的な調査を実施したところ、以下に示すように、多くの場合、管理型処分場にて処理されていることが確認された。しかし、一時保管を余儀なくされている場合もあることから、引き続き、関係者の理解促進を図りつつ、8月29日付け処理方針を踏まえた適切な処理を促進することが必要である。
① 回答の得られた16都県410施設中、16都県390施設においては、8,000Bq/kg 以下の焼却灰等を管理型処分場にて処分している(主灰、飛灰ともに8,000Bq/kgを超えている7施設は除く)。」
「対策の緊急性を考慮すれば、これまでに得られている知見をもとに、処分先の見通しが得られた施設の焼却灰等を対象に、溶出抑制措置を含めた最適な手法について、個別の施設に即して具体的に検討していくことが適当。
そのためには、都道府県を含めた関係者の協力の下、国の積極的な関与により、まずはモデル事業として、先導的な取組を具体化する必要がある。
その際、現場における現実的な対応を考慮して、次のような考え方で検討を進めることが適当。
① 飛灰については、溶出を抑制するためのセメント固化等の措置により8,000Bq/kg以下となる場合には、その後の工程における作業者の安全の観点からも、溶出抑制の措置を焼却施設の場内にて行うことが有効。」
また、この9月25日の第7回災害廃棄物安全評価委員会では環境省から「指定廃棄物の指定基準について」との資料(資料5-3)が提出され「どのようにさだめるのか?」との問題提起がなされた。
2011年10月10日
2011年10月10日の第8回災害廃棄物安全評価委員会(2011年10月10日)において、環境省から.環境省から、資料3、4-1、4-2、4-3に基づき、放射性物質汚染対処特別措置法の省令等により定めることになる、指定廃棄物の指定基準、廃棄物の放射性物質による汚染状態の調査義務の対象とする施設及びその調査方法について説明があった。
ここで環境省から指定廃棄物の指定基準案として8,000Bq/kgを提示し、委員から了承された。
同時に委員から指定廃棄物の指定基準及び特定廃棄物の処理基準等について、環境省において、委員の意見を踏まえ、パブリックコメントの準備を進めることが了承された。
2011年10月25日
2011年10月25日に原子力安全委員会が開かれ「1キログラムあたり8,000 ベクレル以下」について
「(坂川) 災害廃棄物は普通8000Bq/kg 以下だが、焼却後はそれを超える場合がある。焼却灰については、一般廃棄物は10 万Bq/kg 以下だが、産業廃棄物は10 万Bq/kg を超えるものが発生している。」
「(丸山)埋立処分について8000Bq/kg 以下の廃棄物でも、跡地利用制限を設けることが必要ではないか。」
との意見が委員から出された。
2011年11月8日
2011年11月8日(火)から2011年11月17日(木)にかけて、「放射性物質汚染対処特措法関係省令案に対する意見の募集(パブリックコメント)」がされた。
なお、この意見募集について、「放射性物質汚染対処特措法 省令事項素案について」との資料が添付され、このなかに「3.指定廃棄物の指定基準(第17 条第1項)」として以下のように書かれている。
「法第17 条第1項では「環境大臣は、前条第一項の規定による調査の結果、同項各号に定める廃
棄物の事故由来放射性物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認めるときは、当該廃棄物を特別な管理が必要な程度に事故由来放射性物質により汚染された廃棄物として指定するものとする。」こととされている。よって、環境省令では「セシウム134 及びセシウム137 の放射能濃度の合計値が、1キログラムあたり8,000 ベクレル以下であること」を定めることとする。」
2011年11月11日
2011年11月11日、原子力安全委員会が開かれ、「1キログラムあたり8,000 ベクレル以下」について
「(木村)8000Bq/kg 以下なら間違いなく10μSv/年を下回る。」
「(倉崎)8000Bq/kg 以下でも管理期間終了後に制限を設けなければ、10μSv/年を超えるケースがある。指定地域外の廃棄物も同様のことがありうることになる。特定一般廃棄物等の要件は、県を指定しているが指定範囲は妥当か。」
「(代谷)低線量被ばくを気にしている人が増えている。管理期間終了後も含めて評価して説明することが必要になると思う。8000Bq/kg 以下でも、測った記録を残すことは重要。」
との委員からの意見があった。
2011年11月15日
2011年11月15日、第九回災害廃棄物安全検討委員会が開かれ、環境省から資料8により「放射性物質汚染対処特措法 省令事項素案について」の説明があった。
このなかで特別措置法施行規則第7条1項について「環境省令では「セシウム134 及びセシウム137 の放射能濃度の合計値が、1キログラムあたり8,000 ベクレル以下であること」との記載があった。
2011年11月22日
2011年11月22日に環境省は放射線審議会に対し「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法の規定に基づく放射線障害の防止に関する技術的基準の策定について」として「指定廃棄物の基準 セシウム百三十四及びセシウム百三十七の放射能濃度の合計値が、一キログラムあたり八千ベクレル以下であること」についての意見を求め了承された。
2011年11月22日に環境省は「放射性物質汚染対処特別措置法の規定に基づく
放射線障害の防止に関する技術的基準について」を発表している。
ここで、環境省は「8000Bq/kg以下」としたことについて、次のように書いている。
「2.指定廃棄物の指定基準
【指定廃棄物の指定基準の考え方②】
○シナリオ評価により、8,000Bq/kgの廃棄物を通常の処理方法で処理する場合、周辺住民よりも被ばくしやすい作業者でも、その被ばく線量は、原子力安全委員会の示しためやすである1mSv/年を下回ることを確認した(例えば、8,000Bq/kgの廃棄物をそのまま埋立処分する場合の作業員の被ばく量は、0.78mSv/年※。)。
○このように、8,000Bq/kg以下の廃棄物については、特別な処理方法をとることなく、周辺住民・作業者のいずれにとっても安全に処理することができる。したがって、指定基準は8,000Bq/kgとする。」
2011年12月1日
2011年12月1日、環境省は11月30日付諮問文書を原子力安全委員会に提出した。
2011年12月2日
2011年12月2日に第十回災害廃棄物安全検討委員会が開かれ、環境省から「放射性物質汚染対処特措法省令事項素案 パブリックコメント結果を踏まえた修正について」の報告があった。
ここにおいて「8000Bq/kg以下の廃棄物は遮水工のない安定型処分場における埋め立てを想定した安全評価においても処理の安全性が確保されることを確認している」との記述がある。
2011年12月2日に(独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター より「放射性物質の挙動からみた適正な廃棄処理分(技術資料 )」が発表された。
2011年12月9日
2011年12月9日、環境省は先に12月1日に原子力委員会に提出の11月30日付諮問文書を取り下げ、新たな諮問文書を原子力委員会に提出した。
2011年12月12日
2011年12月12日、原子力安全委員会は第85回原子力安全委員会を開き、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法第二十条等の環境省令の制定について」との答申を環境省に対して出した。
2011年12月14日
2011年12月14日に環境省令第3号として「放射性物質汚染対策特別措置法施行規則」が出され、その中の第23-26条で8000ベクレル超の管理基準を盛り込んだ結果、同時に8000ベクレル以下についもあぶり出し解釈で、これを認知させた。
放射性物質特措法施行規則第14条で「指定廃棄物は「8000Bq/kg以下」と規定し、その廃棄物とは、同施行規則第5条の調査にかかわるものであって、この調査は特措法第 16条一項に定める調査であり、この特措法第16条一項に定める調査とは特措法第24条に定める特定一般廃棄物処理施設を対象にした調査である」と規定した。
以上が、震災ガレキの広域処理の基準としている「1kgあたり8000ベクレル以下埋立処分可」の数字が生まれてきた経過である。
では、結論として、放射性物質汚染特別措置法と放射性物質汚染特別外法施行規則の中で、「8000Bq/kg以下埋立処分可」がどう位置づけられているかというと、下記のようになっていると結論付けられるであろう。
①環境省令33号(2011年12月14日)放射性物質特措法施行規則14条で「特別措置法17条一項の環境省令で定める基準(特別な管理が必要な福島原 発由来の廃棄物の指定基準」として「①特別措置法施行規則第5条に規定する調査によったもの、で、②8000Bq/kg以下であること」と規定してい.る。
②その「特別措置法施行規則第5条に規定する調査」では「特別措置法第16条一項で環境省令によって定める方法で調査したものによるもの」の中身を書いている。
したがって、「8000Bq/kg以下埋立処分可」の法的な位置づけは「特別措置法施行規則第5条に規定する調査」をパラメーターにして、放射性物質特措法施行規則14条と特別措置法施行規則第5条と特別措置法17条一項と特別措置法第16条一項とがつながってるという、きわめて微妙な状態にあるといえる。
なお、関連資料については、環境省のサイト「東日本大震災への対応について」からリンクされている資料をご参照されたい。
以上
追記
2012年4月17日
2012年4月17日に環境大臣から下記のような大臣告示が発せられた。
「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理に関する基準等(平成24年環境省告示第76号)」
「告示 の概要 」
1災害廃棄物の受入れ基準
・可燃物:焼却後の焼却灰等の放射能濃度が8,000Bq/kg以下。焼却前の災害廃棄物の放射能濃度の目安として、240Bq/kg以下、流動床炉を用いる場合は480Bq/kg以下(十分な安全率をもった基準)。
・再生利用:製品としての流通前段階で、放射能濃度が100Bq/kg以下。
・不燃物:放射能濃度が8,000Bq/kg以下。実際の放射能濃度は、不検出から数百Bq/kg以下。
2処理の方法
・可燃物の焼却処理:高度の機能を有する排ガス処理装置(バグフィルタ等)が設置されている施設で焼却。焼却灰等は最終処分場に埋立。
→水面埋立の場合:陸域化した部分…陸上の最終処分場と同じ。
水面部分…水面埋立地の残余水面部の内水の放射能濃度が、最終処分場周辺の公共水域の放射能濃度限度以下(下記の式を満たすこと。)であることを要する。
3広域処理における安全性の確認方法
① 搬出側での確認方法
・ 一次仮置場(災害廃棄物の発生地周辺の仮置場)において、災害廃棄物の種類(木質、紙類、繊維等)ごとに放射能濃度を測定し、「1」の基準を満たしていることを確認。
・ 二次仮置場(広域処理が行われる災害廃棄物が搬出される場所)から災害廃棄物を搬出する際に、空間線量率を測定し、バックグラウンドと比較して有意に高くないことを確認。
② 受入側での確認方法
・可燃物の焼却処理、埋立:焼却灰等の放射能濃度を月1回程度測定。最終処分場の敷地境界にて空間線量率を週1回程度測定。水面埋立の場合、残余水面部の内水の放射能濃度を月1回程度測定。
・ 再生利用:再生利用前の均質化された状態で放射能濃度を月1回程度測定(製品についても同様)。
2012年3月10日
東日本大震災と津波によって生じた瓦礫の広域処理が遅れている。
今回の東北大震災の際に生じた瓦礫 (災害廃棄物) は 2,272 万 6,000 トン(環境省)とも 2,673万トン(京都大学)ともいわれている。
また、被災車両 は408,631台、被災漁船数 は18,936 隻、漂流船数は 461 隻 と言われている。
この瓦礫には放射性物質に汚染されている懸念のあるものと、そうでないものとがあって、このことが、広域瓦礫処理のスキームの足を引っ張っている。
震災ガレキの広域処理の根拠法は?
では、瓦礫処理は何の根拠法でもっておこなわれているのか?
昨年8月に成立したがれき処理特別措置法(東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法案 )においては、がれき処理を国の責務と規定し、処理費用の国の補助率は平均95%とし、あとの5%は地方交付税などで手当てし、地方負担はゼロとなっている。
また、がれきの収集、運搬、処分の実務を国が代行し、一時保管場所や最終処分場確保のため被災地以外の自治体に協力を求めるものとしてある。
しかし、このがれき処理特別措置法では、第三条において「(国は)計画的かつ広域的に講ずる責務を有する。」とあり、第四条において「三.当該災害廃棄物の広域的な処理の重要性」とはあり、第六条において「特定被災地方公共団体である市町村以外の地方公共団体に対する広域的な協力の要請及びこれに係る費用の負担」とあるのみである。
また、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)との関係については、第二条において「災害廃棄物とは廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物をいう」とし、第四条において「(国の代行については)廃棄物処理法第十九条の四第一項の規定は、適用しない。(措置命令の例外)」としている。
つまり、がれき処理特別措置法では、広域処理のスキームは前面には想定されておらず、広域的処理の必要性(第四条1-三)と、そのための被災地市町村以外への広域処理の協力要請(第六条1)とそのための国の費用負担(第六条1)をうたっているのみである。
しかも、災害廃棄物を廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物とみなしている以上、そこでは第2条において「放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。」と規定されている以上、放射性物質に汚染された災害廃棄物は、がれき処理特別措置法の対象とならないことになってくる。
また、廃棄物処理法における「広域処理」についての規定としては、第4条において「広域的な見地からの調整を行うこと」についての国・地方公共団体としての責務の規定があり、第9条の9において「一般廃棄物の広域的処理に係る特例」がもうけられ、第15条の4の3において「産業廃棄物の広域的処理に係る特例」がもうけられ、第15条の5において「(広域的処理のための廃棄物センターの)指定」に関する条項があり、第19条2において、「広域的処理認定業者」についての検査の規定がある。
矛盾している放射性物質汚染ガレキの処理の法的根拠
そもそも、私は、震災がれきを、廃棄物処理法の対象とする廃棄物の処理と連動させていること自体がおかしいと思っている。
震災瓦礫は廃棄物であって廃棄物ではない。
廃棄物処理法のもとで、処理するのではなく、環境基準の逆の意味でのデ・レギュレーションの元に、ガレキ発生地区を環境規制緩和特区として位置づけ、現地において迅速に処理するべきものと思ってる。
つまり、津波震災被災地における環境物質汚染の許容度(閾値)を上げて、瓦礫の現地での迅速処理化を優先し、広域処理による汚染の日本列島への希釈された拡大は防ぐべし、 という主張だ。
しかし、国・民主党政権は、廃棄物処理法に準じての、「丁寧な処理」を志向したがために、いたずらに、月日を費やしている。
このことは、本来津波震災被災民が持っているであろう「復興のための貴重な時の利益」を時々刻々失わせているのである。
ここで決定的なのは、放射性物質によって汚染されているかもしれないガレキが、がれき処理特別措置法と放射性物質汚染対処特別措置法との二つの特別措置法にまたがってしまっているということである。
今回のかなり広域にわたるホットスポット形成によるガレキの放射性物質への曝露・汚染を考えれば、がれき処理特別措置法の特定被災地方公共団体と、放射性物質汚染対処特措法の指定汚染廃棄物対策地域とは、必ずしも一致しないからだ。
がれき処理特別措置法では災害廃棄物を廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物とみなしているのに、当の廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物には「放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く」とされているということである。
なお、「100ベクレルが原子力規正法のクリアランスレベルなのだから、100ベクレル以下の瓦礫であれば廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物に該当しうる」との見解も行政側にあるようだ。
しかし、当の廃棄物処理法には廃棄物処理法第二条第一項に規定の「放射性物質及びこれによつて汚染された物」の規定はない。
一方、放射性物質汚染対処特別措置法(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法)の第二十二条において、廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物の対象について「放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く廃棄物」の部分を次のような読み替えることとした。
すなわち、廃棄物処理法の対象とする廃棄物は「”放射性物質汚染対処特措法第一条に規定する事故由来放射性物質によつて汚染された物”を除く、放射性物質によつて汚染された物」とし、つまり福島原発由来以外の放射性物質汚染物については、依然、廃棄物処理法の対象としないが、「放射性物質汚染対処特措法第十三条第一項に規定する対策地域内廃棄物、放射性物質汚染対処特措法第十九条に規定する指定廃棄物その他環境省令で定める物」については、廃棄物処理法の対象とする、ということになる。
したがって、廃棄物処理法第二条第一項の対象とするのは「放射性物質汚染対処特措法第十三条第一項対策地域内廃棄物、第十九条に規定する指定廃棄物その他環境省令で定める物」ってことになる。
となると、放射性物質に汚染された可能性のあるガレキについては、「放射性物質汚染対処特措法第十三条第一項対策地域内廃棄物、第十九条に規定する指定廃棄物その他環境省令で定める物」は廃棄物処理法第二条第一項の対象になることになる。
以上のことから、災害瓦礫の広域処理というスキームには、かなりの無理があるものと感じられる。
減災の観点からはオンサイトでの処理が優先されるべき
それ以前に、この災害瓦礫の広域処理というスキームは、減災(ミチゲーション)の理念に沿ったものであろうか。
ミチゲーションの概念において、ゼロ・ネット・ロスによって環境のトレードオフを実現しようとする場合、まずは、現地(オンサイト)でのトレードオフ実現を試み、それでもトレードオブが実現しない場合にのみ、はじめて非現地(オフサイト)でのトレードオフ実現を試みるのが鉄則だ。
たとえば広大な湿地地帯に鉄道を通す場合、それによって失われた湿地の回復をまずどこでするかといえば、現地での湿地造成をまず試み、それがかなわない場合は、ミチゲーション・バンクによる隔地での湿地造成によって、総体としてのノー・ネット・ロスを試みる。
ましてや、災害瓦礫に放射性物質汚染の高度の蓋然性がある場合は、なおさらである。
では、前段階での現地(オンサイト)でのトレードオフ実現となる瓦礫処理の方法はあるのだろうか?
類似しており、見習うべきドイツでの戦争瓦礫の処理の歴史
ここで思い出されるのは、第二次世界大戦後のドイツでの戦争瓦礫(Trümmer)の処理である。
ベルリンにあるTeufelsbergは別名「悪魔の山」と呼ばれている戦争瓦礫で作られた山である。
このビデオの6分あたりに瓦礫の山が作られるまでが画像で描かれている。
冷戦中はこの山から東ベルリンからの電波を捉えるために利用されたともいわれる。
今ではこのように市民の憩いの場として絶好な場所である。
1970年には、登山練習用のクライミングタワーも設置され、にぎわっている。
シュツットガルトのGrüner Heinerの山上には風力発電の風車が設置されている。(ビデオはこちら)
また、ミュンヘンのオリンピック公園は第一次大戦の瓦礫でつくられた。
平坦な土地に起伏のある場所が生まれ、自然公園の趣を見せている。
ドイツ語でSchuttberg または Müllberg と呼ばれる戦争瓦礫で作られた山は、ドイツにいくつもあるし、主要な都市には必ずある。
このサイトにそれぞれの都市に作られた瓦礫の山の名前と高さと使われた瓦礫の量などの一覧表がある。
海抜で一番高いのはミュンヘンのOlympiabergで海抜567メートル、
地上からの高さが一番高いのはミュンヘンのFröttmaninger Bergで地上75メートル、
埋め立て量のもっとも多いのがシュツットガルトのBirkenkopfで1500万立方メートル
である。
先に紹介したベルリンの Teufelsbergは海抜メートル114メートル、地上55メートル、埋め立て量1200万立方メートルである。
ドイツの戦争瓦礫で作られた山々(山の高い順に掲載)
①ミュンヘンのFröttmaninger Berg (山の高さ75m)
②シュツットガルトのGrüner Heiner (山の高さ70m)
③ハノーバーのMonte Müllo (山の高さ65m)
④メンヒェングラートバッハのRheydter Höhe (山の高さ64m)
⑤アウグスブルグのAugsburger Müllberg (山の高さ55m)
⑥ベルリンのTeufelsber (山の高さ55m)
⑦ミュンヘンのOlympiaberg (山の高さ50m)
⑧フランクフルトのMonte Scherbelino (山の高さ47m)
⑨ミュンスターのMünster-Coerde / Rieselfelder Münste (山の高さ47m)
⑩ライプチッヒのFockeberg (山の高さ40m)
⑪ベルリンのKleiner Bunkerbergと Großer Bunkerberg (山の高さ48mと78m)
⑫シュツットガルトのBirkenkopf (山の高さ40m)
⑬プフォルツハイムのWallberg (山の高さ40m)
⑭ニュルンベルグのSilberbuck (山の高さ38m)
⑮ミュンヘンのLuitpoldhüge (山の高さ37m)
⑯ケルンのHerkulesber (山の高さ25m)
⑰ライプチッヒのRosentalhügel (山の高さ20m)
震災瓦礫での山作りの問題点は?
では、このドイツの例に倣って、今回の東日本の津波震災の分別後の瓦礫処理を現地における山の構築によった場合、どのような環境的な問題が生じるのであろうか?
これらの瓦礫は、まさに通常の生活環境の下では環境汚染物質と言われるものの集合体ともいえる。
ダイオキシン、PCB、アスベスト、有毒化学物質、それに放射性物質などなど。
これによる地下水の汚染は免れないであろうし、そのことで津波震災地での更なる風評被害を招くことも確かであろう。
しかし、汚染物を広域処理で希釈するのと、オンサイトでの処理を優先するのと、マクロでの環境被害はどちらが少なくてすむのだろうか?
オンサイトでの現地処理であれば、環境汚染物質のある程度のシールドは可能であろうし、不特定多数の住民への暴露をある程度さけられうる。
:傾聴に値すべき宮脇昭さん提唱の「震災瓦礫による緑の壁」構想
また、植物生態学の学者の宮脇昭さんが提唱されているように、
「瓦礫の山の中から有害なものや分解不能なものを除き穴を掘って土とともに瓦礫を埋め、マウンドを作り、その上に植樹すると約20年で自然豊かな森ができる。
マウンドを高くすることによりそれらが緑の壁となって津波のエネルギーを減少できる緑の防潮堤となることで、かなりの高さの津波を防ぐことができる」
との提言も、一聴に値するものと思われる。
ガレキの山作りが現地の雇用の場作りとなり、なによりも、永遠に後世代に悲劇を伝えうる自然のモニュメントとなりうる
そして、何よりも、この瓦礫の山作りそのものが、雇用のない被災地での何よりの前向きの公共事業になり、被災者のかけがえのない換金回路になりうるのだ。
そして、それによって作られたオープンスペースは、レクリェーションの場としても、さらには、自然エネルギー基地としての役割も果たしうるはずだ。
さらに言えば、この震災瓦礫で作られた緑の山々が、はるか後々の世代の人々に対する、永久不滅の危険予知のための震災モニュメントともなりうるのだ。(戦争瓦礫で作られた山・ドイツ・シュツットガルトのBirkenkopfの山上には大きな十字架が掲げられ、山それ自体が、戦争の無意味さを示す戦争モニュメントとなっている。)
このことの意義は何物にも変えがたく大きいものと私はおもう。 以上
参考.ドイツの戦争ガレキで作られた山の高さとガレキの埋設量
都市の名前-戦争がれきの山の名前-山の高さ-埋設したガレキの量
①ミュンヘン-Fröttmaninger Berg-75m-1200万立方メートル
②シュツットガルト-Grüner Heiner-70m-?
③ハノーバー-Monte Müllo-65m-?
④メンヒェングラートバッハ-Rheydter Höhe-64m-?
⑤アウグスブルグ-Augsburger Müllberg– 55 m-740万立方メートル
⑥ベルリン-Teufelsberg-55m-1200万立方メートル
⑦ミュンヘン-Olympiaberg-50m-?
⑧フランクフルト-Monte Scherbelino-47m-1200万立方メートル
⑨ミュンスター-Münster-Coerde / Rieselfelder Münste-47m-730万立方メートル
⑩ライプチッヒ-Fockeberg-40m-?
⑪ベルリン-Kleiner und Großer Bunkerberg (Mont Klamott)-40m-2500万立方メートル
⑫シュツットガルト-Birkenkopf-40m-1500万立方メートル
⑬プフォルツハイム-Wallberg-40m-165万立方メートル
⑭ニュルンベルグ-Silberbuck-38m-553万立方メートル
⑮ミュンヘン-Luitpoldhüge-37m-?
⑯ケルン-Herkulesberg-25m
⑰ライプチッヒ-Rosentalhügel (Scherbelberg)-20m
その他10箇所
2010年12月2日
2010年12月2日
先月11月14日はドーハラウンド交渉(多角的貿易交渉)が始まった日であり、かつドーハラウンド交渉開始後9年目の節目を迎えた日でもあった。
ウルグァイ・ラウンドが交渉開始後8年目(1986年 – 1995年)で妥結に至ったのに対して、ドーハ・ラウンドは、9年目にしても、まだ、そのゴール地点が見えていない。
異例の長さである。
過日、韓国ソウルで開催されたG20やAPEC会議でも、ドーハ・ラウンド交渉が”妥結への好機”(Windows of Opportunity)を迎えたとの認識で一致し、その妥結への早期化を確認しあったものの、各論では、その具体的タイム・シリーズについては不透明なものがある。
2008年7月にドーハラウンド交渉が暗礁に乗り上げて以来、はや、2年半、この間に、皮肉にも、二国間または地域間での自由貿易協定締結は加速されてきた。
FTAについてみれば、1989年にはわずか16であったものが、1999年には66となり、そして、ドーハラウンドが難航している間の2009年8月時点では171のFTAが世界に誕生している。
このFTA急増の理由としてはいくつか挙げられる。
第一の理由は、現在の時代遅れのウルグアイ・ラウンドでは、特に、IPRs(知的所有権)にかかわる紛争に耐えられないということである。
新興経済国の台頭に伴う、この種の知的所有権紛争の増加と軋轢回避のために、TRIPS協定はあるものの、時代遅れのウルグァイラウンドでは役に立ちえず、やむを得ざる二国間FTA協定締結が促進された、との見方である。
国連報告書(ADB EconomicsWorking Paper Series “<a href=”http://www.un.org/esa/ffd/msc/regionalcooperation/ADB_WPs.pdf”>Asian FTAs: Trends, Prospects,and Challenges</a>”2010年10月)では次のように記載されている。
「EU、日本、アメリカなど先進国で締結されるほとんどのFTAにおいては、知的所有権保護に関する条項が含まれている。(“almost all FTAs concluded by developed countries, such as the EU, Japan and the United States, include clauses related to the protection of IPRs)
もうひとつの理由は、巨大新興経済国・中国を抱えるアジアにおける自己防衛的なFTA締結の加速である。
それは防衛的であるとともに、中国・インドの経済力への裨益囲い込み確保の意味合いもある。
WTOがドーハラウンド交渉で行き詰まりを見せている一方で、FTAが、もはや、包括的貿易協定に代替しうる立場を確保しえつつある状況には、功罪の二面性がある。
一方で、FTAは、カスタマイズされた貿易自由化協定であり、参加国のきめ細かい国情にフィットできる、小回りのよさがある。
しかし、他方で、WTOの多角的貿易協定で本来果たされるべき平等性を確保しえない。
とくに、アフリカ大陸のサハラ砂漠より南の地域であるサブサハラ地域では、FTAの締結はわずか4に過ぎない。
つまり、これらの地域では、FTAでの擬似的代替をなしえない。
唯一WTOのみでしか、先進国からの価格支持された農産物の流入から、自国の自給的農業農産物を守りうる手立てがない地域といえる。
日本の菅政権がご執心のTPP協定によったとしても、参加するアメリカなど大国は、TPPに参加しながらも、他方では、重畳的にNAFTA.LAFTAなどのFTAに加盟しているのだし、これらのいわば「FTAのハブ化」がすすんでいる国では、原産地表示などについての一物二価的立場を利用して、スパゲッティボール現象をたくみに多国籍で回避しうる有利な立場をとりうる。
つまり、これらの経済協定における「範囲の経済」(economies of scope)を享受しうるのは、アメリカなどの大国のみに限定され、小国にはハンディがのこる、というわけだ。
この点について、上記掲載の国連報告では次の諸点を挙げている。
第一は、EUやアメリカは、これらの小国を覇権的経済力を持って、分割統治をしうる立場にあるということ。
包括貿易協定では、まとまっての小国の立場を主張しうるが、二国間でのFTA協定においては、大国有利の条項をしぶしぶ飲むということになりうる。
第二は、WTOの元であれば、偏見性のない紛争解決のメカニズムが働きうるが、二国間のFTAでは、ともすれば、大国の優位性がともすれば、まかり通りかねない。
では、このまま、ドーハラウンドは死んでしまうのであろうか?
これについて、ラミー事務局長は、次のような見通しを述べている。
これまで、2008年7月の妥結失敗以降のWTOドーハラウンド交渉においては、ここ数ヶ月は、小グループによる「カクテル・アプローチ」によって、非公式でのディスカッションとブレイン・ストーミングを繰り返し行い、一定の成果を挙げてきた。
ただ、これから行うべきことは、このカクテル・アプローチの継続ではなく、それをワンランク、レベルを上げた「交渉セッション」に格上げする必要があるという。
そのためには、これまでのそれらのカクテル・アプローチの成果を踏まえての、改訂版モダリティ・テキストを早く用意する必要がある、としている。
現在有効なモダリティ・テキストは、2008年12月6日の第四版モダリティ・テキストであるが、この第五版を早急に作る必要があるというわけだ。
このことについて、ラミー事務局長は、その必要性を認め、2011年の第一四半期の終わりまでに、新改訂版テキストを用意する、と言明している。
しかし、この早急な改訂版テキスト作りに慎重な対応を求める発展途上国を中心とした意見もある。
すなわち、小グループ間での会合を重ねるという水平的なプロセスが、テキスト作成と同時に進行しなければ、性急なテキスト作りのみでは、交渉を決裂させる、という意見である。
いずれにしても、ドーハ・ラウンドは、2011年中に片付けなくては、永遠に死んでしまう、という認識では、一致しているようだ。
その大きな理由として、2012年に合意がずれ込むと、アメリカの大統領選挙と重なってしまう、ということである。
そのさらに奥には、
ウルグアイラウンドの合意が早くできた裏には、当時のアメリカの経済団体が、アメリカ議会を大きくサポートしたため、という要因があったからなのだが、
それに比して、
現在のアメリカ経済界は、特に金融をはじめとするサービス産業が、目下の金融危機問題で、身動きがつかなくなってしまっていること、さらに悪いことは、アメリカの経済団体の多くは、すでにウルグァイラウンドで自由貿易による果実をすでに享受している、という事実がある。
今回のドーハラウンド合意に向けて、アメリカの経済団体が、ねじれ状態のアメリカ議会をプロモートする力はうせている。
このことは、ドーハラウンド合意への力学的な推進力を喪失させている、と見られている。
そもそも、ドーハラウンドは、1996年のシンガポール開催第1回WTO閣僚会議で提起されたシンガポール・イシュー(Singapore issue)(投資、競争政策、政府調達透明性、貿易円滑化の4分野問題解決)の命題が、2003年9月メキシコ・カンクン開催の第5回WTO閣僚会議において、四命題一括処理か否かで、一括処理を主張するEU・日本を中心とする先進国と、部分処理を主張する発展途上国との分裂を、依然内包しているという、もろさを持ったものなのだ。
ラミー事務局長は、あえて、その四つの命題のうちの貿易円滑化の処理のみを切り離して合意に持ち込もうとするのだが、そこに、そもそものドーハラウンド合意の無理があるとする説も依然有力ではある。
つまり、ここにおいては、シンガポール・イシューは、依然、ドーハラウンドにとっては「トロイの木馬」として機能し続けている、との見方だ。
まして、その後の中国・インドの新興経済勢力の台頭のもとでのシンガポール・イシューの位置づけも、変化してきているとみなければならない。
ラミー事務局長は、2011年合意を目指すためには、少なくとも、来年夏までに大筋合意を取り付け、残りの半年で各国での調整を取り付けたい考えのようである。
2010年9月18日
2010年9月10日
2010年8月29日
ハードディスクを交換した後、それまでWindows 標準でついてきていたOutlook Expressメールソフトで受信したメールを見られるようにしたいと思われたことはありませんか?
受信したメールを見られるようにするには、以下の手順によります。
①交換したハード・ディスクをアダプターを使って、現用のコンピュータにUSB接続する
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交換のためはずしたハード・ディスクを現用のコンピュータにUSB接続するには、上記の写真のようなアダプターを使います。
二-三千円程度で「KAMA CONNECT」などの商品が入手可能のはずです。
このアダプターを使えば、クラッシュしたハードディスクに新たにOSを上書きしなくても、そのまま、新しいハードディスクに変えたほうが、手間隙かからなくすみます。
もっとも、それらの交換後のハードディスクの残骸が、部屋中に散らばるというデメリットはありますが(笑)
なお、ハードディスクがSATA形式の場合には、アダプター(1,500円程度)が必要になる場合もありえます。
これらの変換器を通して現用のPCにUSB接続しますと、マイコンピュータに、交換前のハードディスクがEドライブなどの形で認識されるはずです。
この認識されたハードディスクから、以下の手順に基づき、交換前のハードディスクからOutlook Expressメールソフトで受信したメールを読み取ることができます。
あるいは、交換前のハードディスクから、以下の場所にあるメールファイル「Outlook Express」をそのまま、コピーし、現用のコンピュータにファイル『再現メール』(例)を作り、貼り付けておいてもかまいません。
②隠しファイルとなっているファイルを読めるようにする。
「コントロールパネル」をクリックし、そのなかの「フォルダオプション」をクリックする
「表示」をクリックする。
「詳細設定」のなかの「ファイルとフォルダの表示」の下にある「〇すべてのファイルとフォルダを表示する』の丸印にチェックを入れる。
一番下の「適用(A)」を左クリックする。
③Outlook Express で受信したメールのファイルの場所を探す
C ドライブの
「Documents and Settings」
→「ユーザー名」
→「Local Settings」
→「Application Data」
→「Identities」
→「よく分からない英数字」
→「Microsoft」
→「Outlook Express」
ここに受信したメールが、暗号ファイルである.dbx(ディービーエックス)ファイルとしてあります。
①で「Outlook Express」をそのまま、コピーし、現用のコンピュータにファイル『再現メール』(例)を作り、貼り付けた場合には、この『再現メール』に受信したメールが、暗号ファイルである.dbx(ディービーエックス)ファイルとしてあります。
④.dbxファイルを開くソフトをダウンロードする
.dbxとは、Microsoft社のメールソフト(メーラー)である「Outlook」「Outlook Express」によって用いられるデータ保存ファイルに付く拡張子のことです。
.dbxファイルには、「受信トレイ」のように仮想的に作成されたフォルダのデータが収められています。
中身が符号化されているため、通常は読み取ることができません。
この暗号を読み取るには、DbxRescue(ver.1.05)というメールデータ救出ソフトが必要です。
DbxRescueソフトは、Outlook Express の壊れたデータファイル から、できるだけメールデータを救出することを目的としたツールです。
DBXファイル (OE5/6) 及び MBXファイル (OE4) に対応しています。
DbxRescueソフトは、こちら
http://www.vector.co.jp/soft/dl/win95/net/se271878.html
からダウンロードします。
⑤ダウンロードしたDbxRescueの使い方
まず、解凍したファイルのアイコン「DbxResq」をクリックします。
「DbxResq」というポップアップメニューが登場します。
画面のそれぞれの項目の説明と使い方は次のとおりです。
[ 入力ファイル ] : 対象となるDBXファイルを指定する。直接入力可。
(「ファイルを開く」ダイアログを使って指定する。
* エクスプローラなどからファイルをドラグ&ドロップしても可。)
[ 出力フォルダ ] : 救出したEMLファイルの出力先フォルダを指定する。(新らしくそのためのフォルダを作っておくといい)
(「フォルダの参照」ダイアログを使って指定する。
* 入力ファイルのファイル名に従って、自動的にフォルダ候補が表示される。
* 空欄の場合は、[入力ファイル]と同じ階層に新フォルダを自動的に作成される。)
[ ゴミフォルダ ] : ゴミデータと思われるファイルを出力するフォルダ名。
[ 解析モード ] : ファイル解析のレベル。
[ 簡易モード ] : 速度=普通。4バイトずつ解析。軽度の破損ならこれでOK。
[ 詳細モード ] : 速度=めっさ遅い。1バイトずつ解析するので覚悟が必要。
[ バッファ ] : メモリバッファサイズ。大きくすると処理速度が向上するかも。
(* 上げ過ぎるとスワップが発生しやすくなり、逆効果。ほどほどに。
[ 状況 ] : 処理状況の表示。
[ 開始 ] : 処理開始。せめて[入力ファイル]は指定してから。
[ 中止 ] : 処理中止。中断ではないので再開は不可。
[ 終了 ] : プログラムの終了。実行中の処理がある場合は強制的に中止される。
⑥具体的な進め方
まず、デスクトップに『再現メール』などとしたファイルを作ってください。
そこに、
「Documents and Settings」
→「ユーザー名」
→「Local Settings」
→「Application Data」
→「Identities」
→「よく分からない英数字」
→「Microsoft」
→「Outlook Express」
の最後の「Outlook Express」のファイルの中ですでに可視化している.dbxファイルをコピーし、この『再現メール』ファイルに貼り付けます。
次に、「DbxResq」のポップアップメニューにある「入力ファイル(I)」の「参照(B)」をクリックし、デスクトップの『再現メール』ファイルの中の再現したい.dbxファイルをクリックします。
次に、『出力フォルダ(O)』の参照をクリックし、『再現メール』ファイルを出します。
次に、『解析モード(M)』のうち、『簡易モード』の丸印にクリックを入れます。
次に『開始(S)』をクリックしますと、再現が始まります。
解析が終わりますと、『状況』の横に「***個のメールファイルを出力しました』とのメッセージが出ます。
『終了(C)』をクリックし、解析を終わります。
⑦出力後のファイルの見方
デスクトップの『再現メール』の中を見ますと、数字のたくさんついたファイルがいっぱい出ているはずです。
この一つ一つが、再現されたメールのファイルです。
あんまりいっぱい出てくるので、あらかじめ『重要メール』などとした出力用ファイルをそれぞれ作っておいたほうがいいかもしれません。(これらを後で、OutlookExpressソフトで再現する場合にも、この方が都合がいいようです。)
ファイルについている数字は「発見位置(16進数)」の数字です。
これらは、EMLファイル (*.eml) の形式です。
EMLファイルは Outlook Express にドラグ&ドロップすれば再取り込みが可能となります。
そのうちのひとつをクリックしますと、ひとつのメール・ソフトがひらき、ひとつのメールが再現されるはずです。
そのほかに『trash』(ごみのファイル)ファイルもあります。
これら、「ゴミの分別」についてですが、データ中に “To:” または “From:” が含まれない場合は、ゴミフォルダへ移動します。
日本語以外の環境で使用する場合、たとえば、英語で使用する場合は、”Japanese.lng” を “Japanese.ln_” に変更します。
それ以外の言語で使用する場合は、”English.ln_” を “< 言語名>.lng” にコピーしてから、テキストエディタで編集してください。
なお、ツリー構造は復旧できませんし、すべてのデータが復旧できるわけではないことも、ご承知ください。
⑧まとめて再現メールを見る方法
以上の手順で、再現されたメールのひとつひとつを個別にクリックすれば、メール・ソフトが立ち上がり、見ることができますが、再現メールの数が多い場合は、大変です。
そこで、以下の方法で、再現された多くのメールを一括して見ることができます。
EdMaxというメーラー(フリー版)をダウンロードしてください。
EdMaxにてアカウントを作成
アカウント内に適当なフォルダを作成(EdMaxを開き、上の「ファイル」→「新規フォルダ」→左のメニューに出たフォルダに名前を入れる)
そのフォルダの上に、emlファイルをまとめてコピペしドラッグしてインポート
(マウス左クリックで「.eml」フォルダをまとめてコピーしてきたものを、左側のメニューの中の新しくできたフォルダの上までドラッグしてきて、インポートしたいフォルダの上で左クリックをはずす。→「インポート」というポップアップが出てくる→出てきたポップアップメニューの中の「○ eml(*eml)」の丸にチェックを入れる。→右の「OK」をクリック→フォルダの中にメールがインポートされていく。)
作ったフォルダの場所は、「マイコンピュータ」→「ローカルディスク(C)」→「ProgramFiles」→「EdMax」→「Account」→「Account」→「受信」→「新規作成ファイル」)
インポートしたメールを書き出す前に
設定 > メーラー設定 > 表示 > ヘッダカスタム表示
にて通常表示するヘッダをSubject(件名)とDate(送信日時)にしておく。
フォルダ内のメールを「すべて選択」
ファイル > エクスポート
形式は「テキスト(通常ヘッダ付き)」を選択
ファイル名を記入し保存
HTMLメールはソースコード(HTMLタグの付いたテキスト)がそのまま保存
⑨おわりに
以上がDbxRescueというソフトを使った、Outlook Expressメールの再現方法です。
なお、このメール再現は、以前にメールのファイルの容量圧縮のために「フォルダの最適化」 を行った後の場合では、再現できません。
その他、最新版の配布と、掲示板でのサポートは以下のURLにて行っています。
http://www.geocities.jp/zzuketta/
現在、Outlook Expressというメール・ソフトは、Windowsにはバンドルされておらず、代わりに、 [Microsoft Office Outlook] に移行しています。
Outlookの場合ですと、たとえデータが壊れても付属の scanpst.exe すなわち「受信トレイ修復ツール」で、簡単に強力に修復できます。
このように再現で苦労したあなたですが、今後は、メール内容の再現に厄介なOutlook Expressは使わないにこしたことはないのですが、そのほかのメールソフト( [Mozilla Thunderbird]、 [EdMaxフリー版]、 [電信八号]、 [Sylpheed]、 [Pochy]、 [Becky!]、 [EdMax]、 [AL-Mail]、 [Eudora]、 [Shuriken]、 [秀丸メール(旧・鶴亀メール)])などを試してみるのも一方法かと思います。
私は、この中の [Becky!]を使っており、その後、快適です。
2010年8月17日
日本の民主党政権が目指している農業者戸別所得補償というスキームは、その当事者に言わせると、EUの直接支払いを雛形にしたというのだが、その雛形となったというEUの直接支払い自体、すでに、大きな変貌を遂げている。
現在の日本の農業者戸別所得補償スキームを見る限り、その雛形は、現在の2003年のFischer reform(New Cap)ではなく、その前の改革以前の1992年のMacSharry reforms(Old Cap)であると見られる。
2003年のFischer reform(New Cap)において、EUが改革を目指したポイントは、それまでのマーケットを通して(Market Measures)支払う共同市場組織(CMOs)と呼ばれるスキームや、家畜の個体別支払いや地域限定支払い(Coupled Payment)から離脱した、生産とは連動しない、デ・カップリングした支援であり、シングル・ペイメント・シェーマ(single payment scheme=SPS)といわれるものであった。
シングル・ペイメントの目的は、農家に、生産調整を許容しながら、何を生産するかを農民の意思に任せつつ、自らの能力やスキルに応じた安定した収入を得させるためのものである。
シングル・ペイメントを農民が得るためには、一定の資格を必要とし、この資格は、これまでの生産実績や、計画初年度の実績によって決められる。
このシングル・ペイメントに加えて、農家は、蛋白作物、コメ、ナッツ、馬鈴薯でんぷん、牛乳、乳製品、種子、綿花、オリーブ、牛肉、子牛肉などについては、2012年終了を前提として、特別支援措置がある。
さらに、一定のシーリングの元に、シングル・エリア・ペイメント(Single Area Payment Scheme=SAPS)と呼ばれるものがある。
なによりも、2003年のFischer reform(New Cap)において特記すべきは、クロス・コンプライアンス(Cross-compliance)という概念が設けられたことにある。(こちらもご参照)
すなわち、農家が直接支払いを受けるためには、公衆に寄与し得、動植物の健全な成長に寄与し得、環境と動物福祉に寄与し得、農家自ら所有する農地をよい農業条件と環境条件に保つことに寄与し得るための、一定の条件に適合しなければならない、ということである。
その基準に達しない地域なり農家に対しては、支払いの総額は減少しうるということになる。
また、これは牧草地についても適用され、農業用地のトータルの一定割合に牧草地が保たれる必要がある、という制約も加わる。
しかし、この現在の2003年Fischer reform(New Cap)も、すでに次のような厳しい批判にさらされている。
すなわち、クロス・コンプライアンスによって正当化された一般支払いよりも、必要とされる公共財を生産する農家へのターゲット支払いを進めるべきである、とのStefan Tangermann氏らによる批判である。
氏は、その意見で、現在のニューCAPによる直接支払いは、EUの財政的理由で、2013年以降は立ち行かなくなるとしている。
その上で、氏は、2013年以降のCAPのスキームを模索する上で、現在のCAP予算を農村開発のための個々の施策に振り向けるべきである、と、主張している。
EU圏の財政悪化によって、農家への直接支払いに対する社会的許容を鈍らせているのは、農業部門以外の部門の経済的疲弊化である。
農業部門のみ、どうして優遇されるのか?との不公平感が農業外部門において充満しつつある。
参考「How can direct payments be justified after 2013?」
Konrad Hagedorn氏も、農業の多面的機能インセンティブに直接支払い政策を選んだ場合、取引費用では、直接支払い型インセンティブは、インセンティブではベストな選択とはいえず、面的な制度設定変更のほうが効果はある、としている。
参考「Multifunctional agriculture : an institutional interpretation 」(Hagedorn Konrad )(markets:understanding the critical linkage)(October 28-29, 2004)
このようなEUにおける直接支払いの議論経過を見てみると、日本でようやく始まるクロス・コンプライアンスなき、原初的形態での直接支払い=農業者戸別所得補償スキームには、EUとは二周も三周も遅れたスキームの稚拙さが見られる。
日本においても、直接支払い政策に移行すればするほど、ミクロの面での不公平間が強まってくる。
農業に対する直接支払いが社会的に是認されるのは、その支払いが環境などの外部経済に資するというクロス・コンプライアンスの条件に適合してのことであるが、日本でこれから試行しようとしている在来型のゼネラル・ペイメントでは、そのトレードオフとなる社会効果が期待できない。
農業保護の甘い論理構成として、緑資源に資するから、とか、農業は自然と一体だから、といった論理は、クロス・コンプライアンスの点からは、もはや通用しない。
クロス・コンプライアンスの観点からなら、「では、その論理なら、環境に直接投資したほうが」、ということになってしまうからだ。
また、カロリー・ベースでの食料自給率の向上は、消費者・国民全体に資する、と主張する向きもある。
では、カロリー自給率の向上が、農業に対する直接支払いのクロス・コンプライアンスとして位置づけられうるか、といえば、納税者でもある農産物消費者にとっては、きわめてメリットの少ない、対価といえる。
つまり、カロリーベースで低い自給率をいち早く改善できるのは、高い飼料自給率だからだ。
カロリーベースで低い自給率をいち早く改善できるキーマンは、納税者でもある農産物消費者に協力を求めるよりも、まず低い飼料自給率の改善からはじめるべき農業者自身にあるからだ。
プロゴルファーの石川遼君を動員してのカロリーベースの食料自給率向上キャンペーンは、、茶の間の納税者でもある消費者に向けられるべきなのではなく、まず、カロリーベース自給率を大きく左右している飼料自給率向上の鍵を握っている畜産当事者に向けられるべきものだ。
農家に対する直接支払いの政策目的は、決して、農家の生活安定とか農家の消費性向上昇などにあるのではなく、あくまで、クロス・コンプライアンスにもとづいた外部経済の向上にあり、そのことによる行政効果と政府支出の軽減が、トレードオフの対極にあるということだ。
今後も、農家に対する直接支払いが在来型のゼネラル・ペイメントにとどまる限り、それは、愚民政策であり、ポピュリズム政策であり、ばら撒き政策との揶揄・そしりを免れない、ということだ。
そして、これらのスキームに永続性がないことを一番知っており、それについて一番不安を抱いているのは、ほかならぬ農民自身である。ということだ。
2010年8月16日
先日のFOMC発表後の急速な円高について、その原因が、アメリカの景気後退予測にある、などと言われているが、ドル売りの説明にはなっても、円買いの説明とはなっておらず、その指摘は本質を突いていない。
日本では、マスコミでも、ドル円相場だけをテレビで発表するせいか、円高になれば「円高ドル安」との言葉を使うが、確かにドルは円に対しては弱いが、では、他の通貨に比してどうかといえば、他の通貨に対しては、強いのである。
つまり、円に対してだけ、ドルは安く、その他の通貨に対しては、決して安くはないのである。
今、すべての通貨に対して、強いのは円であり、弱いのはユーロなのだ。
今回の円高の要素としては、次のようなものがありうる。
①円高と連動している日米国債の金利格差が、今回のFOMC決定後縮小しているという要素
②リスク回避通貨(Risk Averse Currency)として円がスイスフランとともに投機筋から選好されているという要素
③業績予想の前提になる産業界の想定為替レートに比較して相対的に円高となっているという要素
④ユーロ圏でのソブリン・リスク増大の余波と、ソブリンCDSスプレッド(ソブリン・クレジット・デフォルト・スワップ-Sovereign Credit default swap)拡大によるユーロ安・円高という、ドル圏事情とはことなるユーロ圏事情での円高という要素(参考-Markit)
⑤世界各国が自国通貨安について、為替介入せず、慇懃な無視をする方針に変わってきているという要素
今回のFOMCの発表後、ドルが売られ、円が買われたのは、FOMC声明でMBS満期到来分を米国債に振り向けるとの決定で米国債の金利が低下し、円高につながる日米国債金利差が縮小したことが大きい。、
ちなみに、日米2年もの国債の利回り格差は、FOMC声明前には、日本国債0.16 米国債0.65 であり、 日米利回り格差0.49であったものが、 FOMC声明後には、 日本国債0.14 米国債 0.50 となり、日米利回り格差0.36となり、これによって、日米の利回り格差は0.13縮小した。
参考
「米国債2年もの利回り推移チャート」
「日本国債2年もの利回り推移チャート」
「米国債10年もの利回り推移チャート」
「日本国債10年もの利回り推移チャート」
また、ロンドン銀行間貸出金利であるRIBOR金利のドル建てと円建ての金利格差についてみても、8月2日と8月11日比較で、翌日物0.00593、3ヶ月もの0.06031、6ヶ月もの0.07619それぞれ縮小している。
参考
「LIBOR 日本円金利推移サイト」
「LIBOR 米国ドル金利推移サイト」
ここで円安時代を振り返ってみよう。
円も金利も安いときに、円ベースで借り入れて、これを円売りドル買いで、ドルに換えて、運用資金をドルロングポジション、円ショートポジションにして、円を売り持ちにしておく。
その後の円相場にもよるが、調達時の低金利と、円をドルに買えるときの為替差益と、円が安くなることで、ドルロングポジション、円ショートポジション自体も、利益を生み出すという、一挙三得が得られてきた。
その後、日本の政策金利は、これ以上下げられないという非負制約の元に事実上金利政策の無効化を迫られたが、リーマンショック以降、世界各国の金利の低下傾向が始まり、世界の金利と日本の金利との格差が縮まってきた。
こうなると、それまでの円キャリ時代の円ベースの借り入れを返そうとする動きが強くなる。
円ベースの借り入れ返済金を確保するために、ドル売り円買いが急激に増える結果、円があがってきた。
円が上がることによって、今度は、ドルロングポジション、円ショートポジションに損が出始めるので、急速にポジション解消にはいるうごきがでてきた。
ポジション解消によって、更なる円高に見舞われ、円キャリートレードの巻き戻しによる動きがいっそう強くなってきた。
これが、いわゆる円キャリのアンワインド現象である。
また、世界の高レバレッジ規制が、これに輪をかけてくる。
では、なぜ、日米の金利格差は縮小してきたのだろうか?
その質問は、逆に、「では、なぜ、これまで、日米の金利格差は広く温存され続けてきたのだろう?」という疑問にそのままつながる。
ここに、5年前に私が書いたブログ記事「日米金利差放置を求めるグレン・ハバードさんの意図は、ドル暴落阻止メリットにあり。」がある。
この時期は、まさに円キャリ全盛期時代の円安時代である。
しかし、このころには、すでにアメリカの為替政策に変質が見られ始めている。
本来、アメリカにとってドル安は経常収支の赤字につながり、レーガン時代の「双子の赤字」のように、巨額な財政赤字を抱えていれば、さらなるドルの暴落を招くものであるから、ドル安は阻止すべきものであったはずである。
しかし、スノー財務長官の時代にドル安容認発言がされてから、そのドル安阻止一点張りの方向は、変化してきた。
ドル安であっても為替介入せず、慇懃な無視(ビナイン・ネグレクトThe Benign Neglect of The Dollar )をする、という方向に変わってきた。
その方向転換の大きな要因になったのは、中国という巨大な市場の出現であったものと思われる。
中国市場という巨大な輸出入のバッファーがあることで、双子の赤字に対する金利、ドルの敏感な対応を不要にしてきた。
双子の赤字問題と、ドル高ドル安の問題とが、セパレートされてきたともいえる。
これまでは、自国通貨安となれば、輸入される価格が高くなって、輸入が減少してき、結果、貿易収支赤字は改善に向かったたが、今は、自国通貨安となっても、輸入インフレは起きないのだ。
一方、いくら巨大な財政赤字があっても、いくら巨大な貿易赤字があっても、そのこと自体で、自国通貨の高安とは連動とならない。
このように、アメリカの双子の赤字の存在自身が、もはや、ドル・円を動かさない要因になってきていた。
また、日米の金利格差が存続している以上、ドルの暴落はありえない、という安心感もそこにあったのだろう。
このように、ドル安の大きな要因は、アメリカが、もはや、双子の赤字解消のために、わざわざ、ドル高を志向する必要がなくなり、ドル安でもって、世界の経済の中での弱いふり競争をすることに大きなメリットを見出してきたからである。
だから、一人日本だけが円高阻止の国際的な協調介入を呼びかけても、G7国はどの国ひとつとして動かないのだ。
これまで見てきたように、まさに、今回の円高の要因は、日米金利格差の縮小によるところが大きい。
日本より政策金利が高い国であれば、自らの裁量で自国の政策金利を下げることで、それより低位にある他国との政策金利の金利格差を縮小させ、自らの国の通貨安に導くことができるのだが、すでに、これ以上金利を下げることができない非負制約のもとにある日本の場合には、マイナス金利政策でも採らない限り、それができない。
つまり、自らの裁量ではもはや自らの通貨水準をコントロールし得ない日本の円という通貨に対して、他の国は、リスク回避の逃避港としての限りない魅力を、そこにもとめているはずなのだ。
その意味で、他国にとっての円という日本の通貨は、
金利水準の非負制約に『追い込まれた通貨』、
自らの裁量を著しく制約された『去勢された通貨』、
としての都合の良さを備えた通貨としてみなされているのである。
キャリー・トレーダーが好む危機回避通貨(Risk Averse Currency)としての条件は
①アメリカとの利率の乖離が下方に著しく少ない国(スイス0.日本マイナス0.15)の通貨
②商品相場との連動性が少い国(オーストラリアとカナダとニュージーランドは失格)の通貨
であるといえる。
では、ほかに、日米金利格差を広げられる余地は、日本にあるのだろうか?
残念ながら、日本の政策金利が非負制約の下にあり、さらに、デフレが実質金利(「名目金利-インフレ率」であり、デフレの場合は、デフレ率の実数を名目金利に加えた数字)を押し上げている以上、皆無である。
もしあるとすれば、次の二つの選択肢しかないように見える。
ひとつは、マイナス金利を日本が志向すること(ご参考「デフレ・スパイラルから逃れられうるマイナス金利のスキームを日本でも検討すべきとき」)であり、もうひとつは、為替介入の変形として、日銀による米国債購入を志向すること(参考「「日銀による米国債直接購入」というバイパス的為替介入スキーム」)である。
しかし、現在の日本の弱体政権では、これら、いずれも、法律改正を伴う荒業には耐えられ得まい。
2010年6月19日
菅総理は、ドーマーの公債命題ってのを知っているのだろうか?
国債の新規発行高=(政府支出―税金)」+(名目金利×国債発行残高)」
つまり健全に国債発行のためには、
①プライマリーバランス(政府支出< 税収)
と同時に
②「名目GDP成長率>名目金利」
が必要ということ。
時間軸政策が有効なのは、「現在の短期金利の低金利状態が将来も続かせる」と政策当局が国民にコミットメントすることによって、「長期金利も長期に低利水準に推移できる」、との国民との信頼の前提があればの話である。
時間軸効果が期待できれば、インフレの拡大・物価上昇と景気の拡大をもたらしうる。
しかし、自然利子率(完全雇用前提で投資と貯蓄均衡前提での利子率)が低下するとの予測のもとでは時間軸効果は阻害される。
自然利子率(完全雇用前提で投資と貯蓄均衡前提での利子率)が低下するとの予測が抱かれてしまうのは、長期的には潜在成長率の低下であり、短期的には、各種の経済ショックの複合による期待成長率の損傷である。
「自然利子率(完全雇用前提で投資と貯蓄均衡前提での利子率)>貨幣利子率」
の場合は、
「投資超過によるインフレが発生」
だが、
「自然利子率< 貨幣利子率」
の場合は、
「投資不足によるデフレの発生」
となる。
貨幣利子率を引き下げないと、更なるデフレの発生となり、インフレの発生とはならないのだが、貨幣利子率は、ゼロ金利の元では、これ以上下げられないという非負制約の下にある。
貨幣利子率(名目利子率)は下げられないが、実質利子率(名目金利ーインフレ率)は下げられる余地はある。
現在は、名目金利が非負制約の下にあるので、上記公式での<str「-インフレ率」< strong=””>部分がデフレによって、プラス要因となって、実質金利を押し上げている状況である。
参考「REAL INTEREST RATE FORECASTS」)</str「-インフレ率」<>
つまり、デフレの罠脱却のためには、自然利子率上昇を左右する技術革新や期待感、実質利子率の低下を左右するマイナス金利政策とインフレ率上昇政策の両方が必要ということになる。
今回の菅政権提示の消費税増税が、これら
①自然利子率の上昇
②インフレ率上昇
のいずれにも寄与しないばかりが、いずれのブレーキ要因となる。
つまり消費税増税は、プライマリーバランス改善の特効薬のつもりが、他の税収を左右する潜在成長率を損ない、結果プライマリーバランスすら改善できなくなる。
また、デフレの罠を放置したままでの消費税増税は、サプライサイドからの消費税の価格転嫁(前方転嫁)を困難にいっそうさせ、結果、「投資減少→産出減少→消費・投資減少」の負のスパイラルに産業界を陥れる。
まさに、デフレの罠をそのままにして、消費税をUPさせても、「国民の財布→国庫の財布」へのシフトが起きるだけなのだ。
もっとも、これについては、非ケインズ効果を標榜するサイドからは、反論もあるであろう。
つまり、家計や企業の行動が、短期的な見通しだけでなく、長期的な見通しをもふまえての経済行動をとるとすれば、将来の年金不安や国家のデフォルト懸念を元に、家計や企業がてforward looking な経済行動をとるとすれば、当面の増税は、長期的な不安を解消し、あながち、消費税の増税はむしろ当面の消費を増大させるのではないか、といった指摘である。
非ケインズ効果が発現しうる条件として、次のものがある。
①財政改革が今後、継続的に続けられていくということについての、コミットメントが、政策当局と国民との間に、どの程度、硬くなされているのか。
②金融システムの安定性がどの程度あり、それによって、資産価格の下落からのがれうる可能性がどの程度強いのか。
連立政権という不安定な政情の元においては、昨年の総選挙において民主党が確約したマニフェストが次々と保護にされていく現状では、非ケインズ効果は、なかなか発現しにくいのではなかろうか。
たとえ、消費税増税を福祉目的税化し、国民の将来の不安を取り除くためのものとしたところで、それによる非ケインズ効果は、発現し得ないことは明白である。
参考
「Domar, E.D. 1944. “The ‘Burden of the Debt’ and the National Income.” American Economic
Review 34(4): 798–827.」
「ギリシャにおける財政危機に関するノート:日本への教訓」
「Kalecki on the causes of unemployment and policies to achieve full employment」
「Martin Wolf hits several nails on the head «Freethinking Economist」
「To Establish Sustainability of Government Deficits:
Methodology and Application」
「Crowding in」(Paul Krugman)
「Interest Rates and Fiscal Sustainability」
「「デフレの罠」脱却のための金融財政政策のシナリオ」(岩本康志)
「財政再建と望ましいポリシーミックスのあり方」
「量的緩和政策と時間軸効果」
「財政赤字」
「政府支出の増加によって政府債務のGDP比は減少するか」
「デフレからの脱却と財政再建」
「自然利子率について:理論整理と計測」
「財政政策の非ケインズ効果をめぐる論点整理」
「スウェーデン国立銀行「デフレ:問題の概観」 」
「デフレ・インフレの一般理論の紹介とコメント」
「デフレ・インフレの一般理論」(寺下 真弘)
「日本のウイニングショット」
「財政運営の安定性」
「政府債務の持続可能性の考え方」
「公債、租税、および経済成長」
「財政赤字問題の再検討」
2010年4月21日
口蹄疫ウイルスには7つのセロ・タイプと60以上のサブ・タイプがあります。
7つのセロタイプは、
①A, ②O, ③C, ④アジア1,⑤ー⑦南アフリカ地域 (SAT) 1, 2 、3
です。
A型からO型へのシフトがあった中国・韓国の口蹄疫ウイルス
近時流行の韓国の口蹄疫は、最初の京畿道の抱川(포천시)(乳牛)や漣川地域では「A」型(A형)でしたが、江華島(강화도)(牛・豚)、(仁川・江華郡・西源面)では「O」型(O형)でした。
なお、現在の韓国での口蹄疫事情ですが、4月8日から10日にかけて、江華島で発生の後、20日には、京畿道・金浦市(김포시)月串面に達し、さらに忠清南道・保寧市(보령시)靑蘿面、忠清南道(충청남도)・青陽郡(청양군)まで南下、拡大している模様です。新たに忠州(충주특별시)忠清南道・扶余郡(부여군)でも感染が確認されました。
忠州で発生した口蹄疫ウィルスの血清型は、江華、金浦とおなじO型とされています。
参考「韓国における口蹄疫の発生状況地図(2010年1月~)」
なお、韓国での口蹄疫関連ニュースは、動画はこちら、ニュース記事はこちらをクリック
1月に中国の新彊ウイグル地区で発生の口蹄疫(牛)は、A型でした。
その後遼寧、河北、山東、河南、広東、広西などに拡大しています。
3月中旬になって、中国の甘肅省の蘭州や臨夏の回族自治州や天水一帯で発生した口蹄疫(豚と羊)は、O型でした。(中国での口蹄疫関連ニュースは、動画はこちら、ニュース記事はこちらをクリック)
このように、口蹄疫の血清型を見てみますと、中国も韓国も、ある時期からそれまでのA型からO型にシフトしています。
中国は、A型は1月22日の北京大興区での発生を最後にして、2月28日の広東省から、それまでのA型からO型へ、韓国は、A型は、1月30日の抱川市での6例目を最後にして、3月23日に解決宣言をしましたが、4月8日から、仁川、江華島などで、O型の発生を見ました。
そのほか、モンゴルでは1月29日に、また、台湾では、2月13日に、O型が発生しています。
宮崎の場合、初発がいつかが、まだ明らかにされていませんが、初発が3月か4月かによって、推定されるその感染ルートも変わってくるものと思われます。
つまり、アジアの口蹄疫ウイルスの血清型のA型からO型へのシフト時期からすれば、宮崎での口蹄疫の初発を3月と見た場合は、中国、モンゴル、台湾、4月と見た場合は、韓国ということが、ごく大雑把にはいえそうです。
現時点で推測されている韓国の口蹄疫の感染ルート
これら一連の中国・韓国などでの口蹄疫感染拡大について、次のような推測がされているようです。
すなわち、韓国・抱川で今年1月発生の今年第一回目の口蹄疫ウイルス(A型)の原因と推測されているのが、昨年10月中国やモンゴルから移住してきた外国人労働者原因説であり、彼ら宛てに、本国から、昨年11月に送られてきた作業衣や靴などがウイルスに汚染されていたのではないかとする説です。
そして韓国内口蹄疫緊急対策会議を通じてウイルスが伝播されたのではないのか、としています。(関係図は、韓国語ですがこちらをご参照)
さらに、韓国の江華島で4月に発生した今年第二回目口蹄疫ウイルス(O型)は、一農場主が、3月8日から13日にかけて中国への旅行を終えて後、消毒衣なしに、農場に入ってからの感染と推測されています。
江華島株は中国株と相同性99.06であり、その後、飼料搬入や獣医師、人工授精師の往来、地方での口蹄疫対策会議などを通じ金浦、忠州、青陽へ拡大していったのではないかとする説です。
参照「Veterinary farm visits to blame for spreading FMD in Korea」
なお、韓国語サイトですが、このサイト「2010년 구제역 전파경로 역학조사 해보니」で、詳細な韓国での感染ルートの分析がされています。
以上を前提とすれば、推測できる韓国口蹄疫ウイルス感染ルートは、今年1月の第一回目(A 型)と、今年4月の第二回目(O型)とでは、中国からの感染ルートが異なる。ということ。そして、そのことから、宮崎への感染ルートを類推すれば、初発3月ならば、中国・モンゴル・台湾などからの直接ルート、初発4月ならば、韓国経由の間接ルート、ということになりそうで、いずれも、元は、中国あたりといえそうです。
なお、2000年春に宮崎で発生の口蹄疫ウイルス(O/JPN/2000)はO型でした。
A型は牛に感染、O型は牛にも豚にも感染というのがこれまでの例のようです。
可能性のある感染ルート
有力視される感染ルートとしては家畜、人、車両、輸入飼料、風・黄砂、畜産物等ですが、このほか、中国製や韓国製の輸入稲わらも考えられます。
また、口蹄疫WindBorne説というのもあるようです。参照「POTENTIAL FOR WIND-BORNE SPREAD OF FOOT-ANDMOUTH DISEASE VIRUS IN AUSTRALIA」
ただ、イギリスでの調査「New Directions: Airborne Transmission of Foot-and-Mouth Disease Virus」などによりますと、口蹄疫の空気感染についてはウイルスの風下濃度(the downwind concentrations)はそのときの気象条件に多分に依存しているとしています。
なお、 口蹄疫ウイルスは、乾燥糞便で2週間、スラリー状の糞便で6ヶ月、尿では1週間、生存可能のようですが、これは、気象条件、phの程度(pH5~6程度で死滅)、土壌の状態、などによって、異なるようです。
(なお、スラリー状糞便中のウイルスの残存期間については、諸説あり、たとえばBartley LM等の研究では100日としています。参照「Review of foot-and-mouth disease virus survival in animal excretions and on fomites」(Bartley LM, Donnelly CA, Anderson RM.2002)
「CIDRAP-Foot-and-Mouth Disease」)
その意味では、、空気感染というよりは、乾燥した糞便が風で舞い上がるほうが問題のようです。
参考「FOOT AND MOUTH DISEASE」
中国・韓国から宮崎への感染ルートはあるのか?
これはまったくの想定ですが、今回の宮崎の口蹄疫ウイルス・ルートを、中国-韓国ルートと疑っていますがどんなものでしょう。
韓国については平成22年1月18日付けで家畜伝染病予防法施行規則の一部が改正され、韓国からの穀物のわら(稲わら等)及び飼料用の乾草は輸入が禁止されているはずです。
また、園芸用稲わらや中国製の畳床の現地での飼料用への転換という可能性も否定できません。
それとも、このところ日本列島を吹き荒れていた黄砂が原因でしょうか。それにしては、発生が局地的のようにも見えますが。
宮崎FMDVと中国・韓国FMDVとの相同性
FMDVとは、口蹄疫ウイルス(Foot-and-Mouth Disease Virus )の略です。
農林水産省は4月23日、最初に見つかった牛から、韓国で今月発生した口蹄疫と同じタイプのO型ウイルスが確認されたと明らかにしました。
また、宮崎の口蹄疫ウイルス(JPN10-AA)と香港の口蹄疫ウイルス(ウイルス名O/HKN/7/2010. O/HKN/8/2010 .O/HKN/13/2010 .O/HKN/14/2010. O/HKN/15/2010 )とウイルスの遺伝子の相同性99.22%であり、韓国の江華島株 (O/Ganghwa/KOR/2010)との相同性98.59%であり、ミャンマーの基準株(O/MYA/7/98)との相同性92.96%であるとしました。
遺伝子配列における「vp1」領域の配列がほぼ一致しているとのことです。
なお、このミャンマーの基準株(O/MYA/7/98)は、1998年発見のものであり、最近発見のO/MYA/5/2009/との相同性については触れていません。
ただ、O/MYA/5/2009/とO/Ganghwa/KOR/2010との相同性は98.59%となっています。
参考「FOOT & MOUTH DISEASE – JAPAN (04): (Miyazaki) SEROTYPE O, GENE」
「OOT AND MOUTH DISEASE – SOUTH KOREA: UPDATE, SEROTYPE O, GENOTYPING」
「FMDV serotype O, Topotype SEA, Genotype Mya-98 closely related to China and South Korea」
「ME-Report2010」
「FAO World Reference Laboratory for Foot-and-Mouth Disease (WRLFMD) Genotyping Report Date: 5 May 2010」
なお、基準株“O/MYA/7/98 (DQ164925)の系統樹などについてはこちらまたはこちらまたはこちら)をご参照ください。
口蹄疫ウイルスの血清型O型には、10から11のサブタイプがあります。
また、系統樹(genetic lineages)のトポタイプとしては、次のものがあります。
①EuropeSouth America (Euro-SA), ②Middle EastSouth Asia (ME-SA), ③South-East Asia (SEA), ④Cathay (China and east Tartary), ⑤West Africa (WA), ⑥East Africa (EA), ⑦Indonesia-1 (ISA-1) ⑧Indonesia-2 (ISA-2)
今回の宮崎株は、ミャンマーの基準株(O/MYA/7/98)との相同性が高いとのことですので、それからいいますと、③South-East Asia (SEA)系統といえそうですがどんなものでしょう。
なお、公開はされていませんが、韓国・江華島株と中国株と相同性99.06とのことです。
韓国でA型口蹄疫が報告されたのが1月31日の6例目まで。その後2月に入って台湾でO型、中国ではそれまでA型だったのが2月22日-28日に初めてO型が広東省で発見。韓国では3月23日にいったんA型の終息宣言がだされた後、4月8日に仁川・江華島でO型が出たという時系列 となっています。
香港の口蹄疫ウイルス“O/MYA/7/98 (DQ164925)“については、「FAO World Reference Laboratory for Foot-and-Mouth Disease (WRLFMD) 」
または
「Outline of ProMED-mail posts」ご参照
本来は多様にある口蹄疫ウイルスのコントロール方法
なお、ここにきて、殺処分の遅れから、それによる更なるウイルスの拡大が懸念され始めています。
2001年のイギリスでの口蹄疫発生の時も同じ問題があったとして、「牛などの大型の家畜を専門とする獣医師の不足が、日英共通の口蹄疫対策の世界的ネックである。」と指摘する向きもあるようです。
ここで、特記すべきは、アメリカ・カリフォルニア州での対応です。
カリフォルニアでは、殺処分の遅れによる更なるウイルスの拡大を避けるために、”vaccinate-to-live”と”vaccinate-to-kill”を使いわけているようです。
すなわち、コントロール手段を①ワクチン接種せず(no-vaccination) ②ワクチン接種後、殺処分せず(vaccinate-to-live) ③ワクチン接種後、殺処分(vaccinate-to-kill)(Suppressive vaccination-抑制ワクチン-ともいいます。) の三つにわけ、このうちの③を、殺処分の遅れによるウイルスの拡大を防ぐためのつなぎ措置としているようです。
“vaccinate-to-kill”政策については、下記のサイトをご参照ください。
「Model Could Aid Emergency Response Planning for Foot-and-Mouth Disease Outbreaks」
「Model could aid emergency response planning for foot-and-mouth disease outbreaks」
「Vaccination against foot-and-mouth disease: the implications for Canada」
「Control Area Activities」
なお、ワクチン接種しても殺処分しない場合(vaccinate-to-live)については、OIEコード(The OIE Terrestrial Animal Health Code)17版ChapterArticle 2.2.10.8. (Recovery of free status 2 (a)(b))において、ワクチン接種後にAppendix 3.8.7にもとづくNSP ELISA試験をしたことを前提にして、①殺処分と、緊急ワクチン接種を併用した場合には、6ヶ月後②殺処分をせず、緊急ワクチン接種をした場合には、12ヶ月後に清浄国復帰が認められています。
参考「C HA P T E R 2 . 2 . 1 0 . F OOT AN D MOUT H D I S E A S E」
「OIE 口蹄疫(改正提案)」
EUにおいても同様の措置がとられており、これについては、指令COUNCIL DIRECTIVE 2003-85-EC(2003年9月発令)で定められています。
参考「Protective Emergency Vaccination for Foot-and-Mouth Disease」
ワクチネーションを利用して、感染地の間に、バッファーゾーン(quarantine zone または controll zone ともいいます。)を作るコントロール手段もあります。
この図は、アフリカでの牛肺疫 (CBPP)のバッファーゾーン構築の例ですが、地図の分布が、宮崎の「川南-えびの市」の位置関係に似ているので、あえて掲げておきます。
参考「EMPRES CONCEPT PAPER ON THE THE EMERGENCY CONTROL OF CONTAGIOUS BOVINE PLEUROPNEUMONIA (CBPP) IN SOUTHERN AND EASTERN AFRICA」
null
なお、封じ込め地区(Containment zone)のなかに入れ子でコンパートメントを設けることをOIEコードに導入することについては、2009年3月のOIEコード委員会から検討に入り、今年5月にチャプター8.5.5のコード改正案としてOIEに上程されることになっています。
しかし、日本政府は、これに対して反対しており、今年2月には次のような反対意見をOIEに提出しています。
「口蹄疫ウイルスに対する効果的なバイオセキュリティ管理システムについての具体的なチェックリストが策定されない限り、第8.5章に口蹄疫清浄コンパートメントの概念を入れるべきではない。なぜならば、口蹄疫はとりわけ空気感染によって拡がること、及び牛や豚は普通野外やオープンスペースで飼養されているからである。」
参考「口蹄疫のコンパートメントに関する条件の追加」
OIEでは、メンバー国からの意見を元に、今年2月に次のような修正を行っています。
「コンパートメントが最初に認められるのは、FMDがコントロールされているゾーンであり、また、獣医師が認めたものであること、そして、プロテクションゾーンは、Article 8.5.5.bis 条項とは関係ないものであることであること」
参考「REPORT OF THE MEETING OF THE OIE TERRESTRIAL ANIMAL HEALTH STANDARDS COMMISSION」
「TERRESTRIAL ANIMAL HEALTH STANDARDS COMMISSION FEBRUARY 2010 REPORT」
コンパートメント条項についてのOIEコード逐条修正対比表はこちらご参照
(追記-今回、宮崎の種牛5頭について特例措置を講じた理由付けとして、5頭の種牛を下位個体群(sub-population)ととらえ、この種牛の特例措置をコンパートメント管理の先駆的事例にとの考え方もあるが、その論理が認められるためには、種牛の畜舎のバイオ・セキュリティ・マネジメント・コントロールが完全であるかどうかにかかっています。
種牛管理のバイオセキュリティプランが必須条件となります。
また、OIEではsub-populationの定義がChapters 4.3 と 4.4.に定められています。)
OIEでのゾーニングやコンパートメントの考え方については、このサイト「CONCEPTS OF ZONING, CONTAINMENT
ZONES AND COMPARTMENTALISATION」が参考になります。
以上のように、、口蹄疫ウイルスのコントロール手段としての殺処分とは一口にいっても、大きく①単なる殺処分(Stamping Policy)②緊急リング・ワクチネーション(Ring Vaccination)手段を伴った殺処分(the stamping-out supported with emergency ring vaccination)に分けられるというわけです。
口蹄疫ウイルスのコントロール手段の種類を列挙すると、次のようになります。
①Stamping Out
②Circle Culling
③Vaccination
④Ring Vaccination
⑤Ring Vaccination followed by Slaughter
⑥Fencing
参考「Foot and Mouth Disease Virus」
有力なウイルス撲滅戦略としてのリング・ワクチネーション
また、ウイルス撲滅戦略(Eradication strategies)としては、次のものがあります。
① stamping-out of infected farms and direct potential contagious contacts(感染農場接触家畜殺処分)
②stamping-out of infected farms plus ring (circle) culling(①+リング状殺処分)
③stamping-out of infected farms plus ring or area vaccination followed by slaughter of all vaccinated animals (”suppressive” vaccination)(②+すべてのワクチン接種家畜殺処分後の地域又はリング・ワクチネーション)
④stamping-out of infected farms plus ring or area vaccination (”protective” vaccination)(感染農場殺処分+リング・ワクチネーション)
⑤ring vaccination only without stamping-out of infected farms and slaughter of vaccinated animals(患畜殺処分なし、ワクチン接種家畜殺処分なしでの地域又はリング・ワクチネーション)
⑥strategic or general vaccination(戦略的ワクチネーション)
なお、「半径1キロメートルの殺処分と半径5キロメートルのワクチネーションとは、同等の効果がある。」との Jantien Backerさんの意見もあります。
参考「Options for control of foot-and-mouth disease: knowledge, capability and policy」
また、オーストラリアの口蹄疫緊急プラン「AUSVETPLAN」には、非常に参考になるものがあります。
参考「AUSVETPLAN」
「AUSVETPLAN Disease Strategy Foot-and-mouth disease」
ワクチン抗体と感染抗体とを区別するためのDIVAシステムなどについて
ただ、リング・ワクチネーションの問題は、ワクチネーション後、ワクチン抗体と感染抗体とが区別できなくなるということです。
ワクチン抗体は、ワクチン接種後、三年は、生体内に残存するといわれています。
このためには、ワクチン抗体と感染抗体が区別できるDIVA (Differentiating Infected from Vaccinated Animals) システムまたはマーカー・ワクチン(Marker Vaccines)が必要になります。
マーカー・ワクチンとは、精製時に非構造タンパク質(NS蛋白質)を取り除き野外感染の抗体と識別できるようにしたワクチンをいいます。
今、新しいマーカーワクチンとしてVP1 G-H loop マーカーワクチンが注目されているようです。
DIVAシステムは、鳥インフルエンザについては、イタリアのDIVAシステムが有名ですが、口蹄疫についても、次のようなシステムがあるようです。
参照「FMD Vaccine Differentiation Group」
「DIFFERENTIATION OF INFECTION FROM VACCINATION BY DETECTION 」
参考「THE NATIONAL FOOT & MOUTH GROUP & VETS FOR VACCINATION」
「Culling versus vaccination: challenging a dogma in veterinary (FMD)」
「Foot and Mouth Disease International Symposium and Workshop」(2010年4月にメルボルンで開かれた口蹄疫にかんするシンポジウム)
「The UK Policy of Stamping Out」
「Supplementary Material for Modelling vaccination strategies against Foot-and-Mouth disease 」
また、Intervet 社のCheckit FMD 3ABCという抗体検査システムが、その迅速さなどで注目されているようです。
ELA(欧州家畜協会.The European Livestock Association )が日本の「ワクチン接種後殺処分」の方針に対して、「ワクチン接種後殺処分せず」の方向とすべしとの声明を出している理由としてこのCheckit FMD 3ABCという抗体検査システムの存在をあげているようです。
(”tracing the disease as fast as possible by using newer diagnostic tests with which one can quickly confirm infection, even in the prodromal/preclinical phase, giving almost immediate assurance”)
ただし、OIEでは、今のところ、この「Checkit FMD 3ABC」についての評価は表明していないようです。
FMDVの潜伏期間
口蹄疫ウイルスの潜伏期間は、一般的には、2日から14日といわれていますが、多くの場合は、3日から5日といわれています。
羊においては、3日から8日といわれています。
豚においては、豚⇔豚感染においては、2日か3日とは言われていますが、ケースによっては、18時間から24時間とも言われています。
一般的に豚の場合は、接餌後1日から3日、曝露後3日から5日 などと言われています。
牛の場合は、2日から14日といわれていますが、それは、ウイルスの曝露の程度や感染経路によるものとされています。
牛⇔牛感染においては、3日から4日といわれています。
家畜がFMDVのキャリア(carriers-運び屋)としての役割を果たす期間
いったん口蹄疫ウイルスに感染した血液は、一貫して、ウイルスの運び屋(キャリア-carriers-)となります。
ワクチン接種によっては、キャリアとなることを阻止できません。
現在の診断方法では、その動物がキャリアなのかどうか、診断する手立ても、キャリアであることを直す手立ても、ありません。
ワクチン(不活化ワクチン)によって抗体ができた家畜も、あるいは野生株からの自然感染によって抗体ができた家畜も、後にウイルスに曝露され、キャリアとなります。
これらの動物は、口蹄疫ウイルスに感染しても、無症候( asymptomatic)です。
これらのキャリアは、他の動物と接触することによって、口蹄疫ウイルス(FMDV)を感染させえます。
口蹄疫ウイルスが、動物にのこる期間(その動物がキャリア-FMDVの運び屋-としての役割を果たす期間)は、宿主によって異なります。参考「Foot and Mouth Disease」
羊の場合は、最長9ヶ月、ヤギの場合は、最長4ヶ月です。
畜牛の場合は、通常6ヶ月内外ですが、ケースによっては、最長3.5年というものもあります。
アフリカ水牛の場合は、キャリアとしては、最長5年ですが、アフリカ水牛の群れとしては、持続的感染が、25年も続くともいわれてています。
ラマは、キャリアにならないといわれています。
豚については、通常は3-4週間内にウイルスがなくなるとされていますが、ただ、唯一の研究(Mezencio JM”Evidence for the persistence of foot-and-mouth disease virus in pigs“)では、豚もキャリアになるとされています。
心配なのは、野生生物に感染した場合ですが、意外に感染するケースは少ないというのが一般的な見解です。
たとえば、2001年のイギリスでの口蹄疫発生の時の野生生物への影響ですが、野生鹿(Wild Deer)について、D. Paton博士の報告があり、ここでは、FMD感染の症候は見られたが捕獲鹿の107検体、474血清検体すべて陰性だったとの報告があるようです。
参考「Absence of Antibodies to Foot-and-Mouth Disease Virus in Free-ranging Roe Deer from Selected Areas of Germany (2001–2002) 」
ワクチン接種後に殺処分している訳
では、なぜ、ワクチン接種を受けた家畜も、殺処分されなければならないのでしょう?
それは、血液検査によって抗体が発見されたとしても、その抗体が、ワクチン接種を受けたできた抗体なのか、それとも、、野生株からの自然感染によって生じた抗体なのかについては、血液検査ではわからないからなのです。
したがって、たとえ、ワクチンによって生じた抗体であっても、最悪のケースである野生株の存在によってできた抗体とみなさざるを得ないという、消去法のもとに、殺処分がおこなわれるということなのです。
ただ、上記に書きましたように、OIEにおいては、OIEコードの改正を行い、緊急ワクチンの接種の場合においては、ワクチン接種後、殺処分をしなくても、一定の条件で、清浄化復帰を認める措置を認めています。
この措置は、EUにおいても、認められています。(2003年9月29日に出されているEU指令2003-85-ECによる)
緊急ワクチンの効果については、Sarah Coxの実験「Emergency FMD Vaccine: Effect of antigen payload on protection, sub-clinical infection and persistence following direct contact challenge of cattle」があります。
又、今回の発生地宮崎は、全国有数の種牛の産地でもあるため、口蹄疫に感染した種牛と、その精液との関係が注目されていますが、1990年のMann, J.A とSellers, R.Fの研究によれば、牛の精液はFMDVを拡げるが羊やヤギの精液はFMDVを広げないとの説があります。
参照「AN ANALYSIS OF THE DISEASE RISKS, OTHER THAN SCRAPIE, ASSOCIATED WITH THE IMPORTATION OF OVINE AND CAPRINE SEMEN AND EMBRYOS FROM CANADA, THE UNITED STATES OF AMERICA AND MEMBER STATES OF THE EUROPEAN UNION」の16ページ
また、牛の胎児や受精卵や胚などについても、同様の見解があるようです。
ワクチン接種と貿易との関係については、こちらのサイト「Impact of Animal Disease Outbreaks and Alternative Control Practices on Agricultural Markets and Trade」ご参照
殺処分後の処理方法
NAHEMSのガイドラインでは次の方法があるとしています。
①埋却(Burial)
②焼却(Incineration)
③ レンダリング
④コンポスト
⑤アルカリ加水分解
このうち、埋却が一番たやすく早く省資源型で環境負荷が少ない、としています。
参考「Georgia Foot and Mouth Disease Emergency Response Plan」
清浄国復帰のための条件
清浄国に復帰するまでの期間は要約すれば下記のとおりとなります。
1.ルーチンにワクチン接種国
①緊急ワクチン接種6ヶ月
②緊急ワクチン非接種24ヶ月
2.ルーチンにワクチン非接種国
①緊急ワクチン非接種3ヶ月
②緊急ワクチン接種(接種家畜殺処分)3ヶ月
③緊急ワクチン接種(接種家畜非殺処分)6ヶ月
参考文献はこちら
なお、旧OIEコードで書いていますので、新旧コード対象はこちらのサイトご参照 Article 2.2.10がFMD
口蹄疫発生後、再び清浄国としてOIE(OIE「国際家畜衛生規約」)からみとめられるためは、次の要件によります。
(1)撲滅措置としてワクチン接種を実施しない場合
スタンピング・アウト(発生農場の家畜全頭の殺処分。以下同じ)および血清学的サーベイランスが実施された場合には、最終発生から3カ月が経過すること
(2)撲滅措置としてワクチン接種を実施した場合
スタンピング・アウトおよび血清学的サーベイランスが実施された場合には、すべてのワクチン接種動物を殺処分してから3カ月が経過すること、またはワクチン接種中止および最終発生から12カ月が経過すること
参考「口蹄疫清浄国への復帰について 」
OIE規定による清浄化復帰のためのサーベイランスは、殺処分の場合と、ワクチン接種の場合とでは異なります。
すなわち、OIEの付属書3.8.7.規定では、口蹄疫発生後実施する血清サーベイランスについて、ワクチン接種しないで生きている個体群とワクチン接種後生きている個体群とでは、その検査方法が、異なります。
前者については、第一段階検査で「SP-ELISA」グループと「NSP.ELISA.3ABC」グループとにわけ、第二段階で「NSP.EITB.VNT」検査とします。
後者は第一段階「NSP.ELISA.3ABC」検査、第二段階「再度 NSPとEITB」検査となっています。
(SP=Structural protein test NSP=Nonstructural protein(s) of foot and mouth disease virus (FMDV) 3ABC=NSP antibody test EITB=Electro-immuno transfer blotting technique (Western blot for NSP antibodies of FMDV) VNT=Virus neutralisation test)
参照「GUIDELINES FOR THE SURVEILLANCE OF FOOT AND MOUTH DISEASE」
また、ワクチンと実際に蔓延しているFMDV(口蹄疫ウイルス)とのマッチング・テストが十分に行われたかが、ワクチンの効力に重要な影響を及ぼします。
なぜなら、当初のマッチング・テストは、動物への抗原投与(Challenge Animal)によらず、多くの場合、実験室でのテスト(in vitro system of vaccine efficiency)によっているため、実際投与した後も、その実効性をフォローする必要があるからです。
また、これはあってならないことですが、ワクチンの保存温度状態が悪く、効力が低下している場合も、よくあるようです。
参考「1. CRP on the control of foot-and-mouth disease」
「Selection of foot and mouth disease vaccine strains – a review」
なお、ワクチンについてですが、セロ・タイプでも、さらに、サブタイプでも、効き目は微妙に異なるようです。
日本で使われる口蹄疫紆余ワクチンは、Merial社のAFTOPOR(こちらやこちらもご参照、他の国で使用されているワクチンは、こちらご参照)といわれています。
今後の新しい口蹄疫ワクチンとして、DNAワクチンの開発が注目を集めています。
参考「Foot-and-mouth disease Vaccine Group – 」
このサイトにこれまで極東各国でA型に使われたワクチン一覧があります。
イギリスの2001年の口蹄疫発生の際にも、ブレア政権のワクチネーションをするかしないかの決断までには、相当の紆余曲折があったことは、このサイト「History of Foot and Mouth epidemic in U.K. 2001」や「 Warmwell.com 」でも垣間見ることかできます。
(イギリスでの200年の口蹄疫発生におけるワクチネーションは、次の異なる方法でミックスされて行わうことで、2001年2月23日からスタートしましたが、National Farmers Unionなど関係団体やEU諸国の反対で実現されませんでした。)
①Standard + 90% vaccination ②Standard +vaccination from May ③IP(感染した建物・施設) only +vaccination ④Standard +barrier vaccination
それらの功罪については、「Dynamics of the 2001 UK Foot and Mouth Epidemic: Stochastic Dispersal in a Heterogeneous Landscape」の3ページご参照)
参考「Culling versus vaccination: challenging a dogma in veterinary (FMD)」
「Foot-and-mouth crisis timetable」
「Supplementary Material for Dynamics of the 2001 UK Foot and Mouth Epidemic – dispersal in a heterogeneous landscape.」
口蹄疫感染動物の肉は、それ自体、更なる感染源となる
最後によく受けるごく素朴な質問にお答えすることにしましょう。
「口蹄疫、肉に毒性がないのに、なぜ廃棄するのか?」という質問です。
口蹄疫ウイルスに感染した牛なり豚の肉は、それ自体、口蹄疫ウイルスの隠れ場(harbor)となっています。
肉が人間の口の中に食された場合には、人間の胃の中の強いphによってウイルスは死滅してしまいますが、肉がレストランでの食材として使われた場合はどうでしょう。
未調理の、又は、生で未加工の肉(raw meat scraps)として、そのまま、残渣(cooked garbage)となり、これが、豚のえさとして流通し、それを食した豚が口蹄疫に感染する恐れがあります。
冷凍肉における口蹄疫ウイルスの生存期間が意外に長いのが気になるところです。
食品における口蹄疫ウイルスの生存期間については、このサイトご参照
イギリスの口蹄疫に関する調査の中で、Wooldridge報告というものがあります。
これによりますと、国際的に口蹄疫汚染肉の密輸問題があり、たとえば、毎年七千トンの中東からの不法肉がイギリスに持ち込まれ、そのうちの95キロが口蹄疫感染肉との数字があります。
そして、それらが、レストランの残渣を通じて、豚に感染したのではないかとの調査があります。
参考「Quantitative risk assessment case study: smuggled meats as disease vectors.」
又、ニュージーランドでの調査においても、食肉を通じての感染経路原因としては、①が、やはり、レストランの残渣から豚への感染、②が、と畜場での感染、ということのようです。
参考「Foot-and-mouth disease: an assessment of the risks facing New Zealand」
その他、口蹄疫ウイルスの生存期間などについては、このサイト「口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について」も参考になります。
また、よくある質問ですが、「ワクチン接種後の牛・豚を食用に流通させてもいいではないか」という素朴な質問をいただきます。
いくつかの調査によっても、ワクチン摂取後の肉や牛乳を人が食しても安全であるとの調査結果が出ています。参考「Vaccination against foot-and-mouth disease: the implications for Canada」(ただし、ワクチンに含まれるアジュバント(Adjuvant)の功罪については、一定の健康上の影響があるとの説もあります。 )
また感染牛の牛乳などに含まれるウイルスの死滅度ですが、諸説あるので一例ですが、牛乳では132度1秒で死滅、72度では15秒で死滅、粉ミルクの場合は乾燥後の二次加熱が必須、130度1-2秒、ph6以下で3ヶ月保管でフリー、プロセスチーズの場合は72度15秒加熱後ph6以下で30日保管といったところです。
しかし、問題は清浄国判定にあります。
ワクチン接種後の生体牛がと畜場にまわってき、生体牛の血液検査によって、FMDV抗体が発見されたとします。
しかし、血液検査では、その抗体がワクチン接種によって生じたものか、それとも、野生株からの感染によって生じたのかは、判定することができません。
判定できない以上、その抗体は、最悪の場合を想定しての、野生株の存在とそこからの感染によって生じたものとしか、みなされません。
そのことをもって、清浄国とは判定されないことになります。
と畜前、と畜後のシナリオについては、豚の例ですが、このサイト「Risk assessment on Foot-and-Mouth Disease (FMD) in pork from vaccinated animals」の2ページ「Scenario tree」をご参照ください。
なお、輸入国の農産物の検疫措置が過剰かどうかの判断はOIE基準と国内安全基準との乖離の幅がSPS協定の「適切な保護水準」(ALOP)にあるかどうかにかかっています。
乖離の幅がALOPより広がるのかどうかは、OIE基準と国内安全基準両者の相対的な関係によります。
二国間畜産衛生条件で合意できるのかどうかが、その際の前提となります。
過剰な風評対策が初動を遅らせた今回の宮崎のケース
最後に、今回の宮崎・口蹄疫、風評対策を重視したあまり初動が遅れたということはありませんでしょうか?
このあたりで、国なり行政なりマスコミは、風評対策なるものの功罪を検証したほうがいいものとおもわれます。
TVなどで流される口蹄疫に関する以下のメッセージ「人には感染しない。感染牛は市場に出ない。万一食べても人体に影響ない。 」ですが、もう一つの大事なポイントである「感染牛の肉はそれ自体口蹄鉄ウイルスの感染源になる」というのが抜けています。
つまり、「万が一食べても人体には影響ありません」キャンペーンが、あたかもウイルス拡大の連鎖が人間の食の段階でストップするから安心、との錯覚を与えていることが問題なのです。
レストランからの生肉や冷凍肉の残渣がリーケージを生み出し、新たなウイルス拡大の連鎖となりうることを、このキャンペーンでは、故意にか見過ごしているといえます。
風評被害にポイントを置きすぎて肝心のポイントが抜けているお粗末さを示しているといってよいでしょう。
牛肉消費減を呼びかねない風評対策のために、「口蹄疫感染肉は食べても人間には感染しません」と「口蹄疫感染肉は決して市場には出回りません」の相矛盾するメッセージを共に風評対策として大衆に伝えることの矛盾とおろかさに、そろそろ、気づくべき時です。
以上
赤外線サーモグラフィでみた口蹄疫感染牛
「Infrared Technology and Foot and Mouth Detection」
null
参考1.文献
WRLFMD Quarterly Report October-December 2009
Foot and Mouth Disease in Cattle in South Korea
FOOT-AND-MOUTH DISEASE
「foot-and-mouth disease」
動物衛生研究所の口蹄疫サイト
「偶蹄類の動物の家畜衛生条件」
参考2.-近年の世界での口蹄疫発生状況一覧
2010年
韓国 牛 – : (KG), OIE 20100108.0089
2009年
ヴェトナム 牛 – (06): vaccination, RFI 20091203.4120
ヴェトナム 牛 – V (05): (PY), (YB) 20091202.4112
トルコ、シリア : susp. RFI 20091129.4081
中国 牛- (06): (XJ), OIE 20091128.4080
インド 牛 – : (KL), susp., RFI 20091120.4002
コンゴ 牛 – (DR): (IT) susp. RFI 20090920.3293
南アフリカ : suspected, RFI 20090915.3241
台湾 豚- (08): (TY) 20090905.3123
ヴェトナム 牛- (02): (QG) RFI 20090826.3005
バングラディッシュ 牛-: susp., RFI 20090823.2974
中東 (06): WRLFMD update, vac. 20090808.2806
ルワンダ 牛-: (ES) susp, RFI 20090807.2795
エクアドル 牛 – (02): conf 20090804.2755
インド 在来反すう類 -: (SK), RFI 20090804.2751
イスラエル:A型 , resolved, OIE 20090803.2732
中東 (05): FAO/OIE surveill., control20090731.2686
イスラエル、パレスチナ自治区: A型 20090714.2510
ネパール 20090625.2318
台湾 豚 – (04): (TY) sentinels 20090624.2301
中国 牛- (05): (SD) A型 20090609.2129
アンゴラ 牛 -: (CC) OIE 20090605.2082
エクアドル 牛 – : susp. 20090601.2036
中東 (04): FAO 20090509.1735
レバノン : A型20090422.1519
中東 (03): serotypes, update 20090410.1377
バーレーン : A型 20090409.1366
台湾、レバノン 20090404.1295
中国 牛- (04): (SC) アジア1型20090403.1283
中東 (02): A型serotypes A, O, update 20090331.1242
台湾 豚- (03): conf.OIE 20090331.1239
中東 : A型O型, update 20090317.1082
マレー半島 (02):clarificn. 20090305.0903
ラオス 牛- : (BL) RFI 20090304.0877
エジプト 牛、バッファロ- : A型 20090303.0865
マレー半島 20090303.0864
パレスチナ自治区: (JN), RFI 20090227.0816
中国 牛- (03): (HB, SH) A型 20090223.0757
レバノン : OIE, untyped 20090222.0734
台湾 豚- : O型 20090219.0689
イスラエル (02): OIE, O型, spread 20090218.0680
イラク Iraq: (BA) 20090208.0577
サウジアラビア (02): vaccination 20090201.0447
サウジアラビア: east, RFI 20090128.0387
ウガンダ 牛- (03): (N., E, & Central) 20090127.0364
中国 牛 – : (HB, A), アジア1型20090124.0318
ヴェトナム 牛- : (LA, KT) A型 20090122.0273]
参考3.2010年1月以降のアジアでの口蹄疫発生状況
1月07日 韓国(Pocheon-抱川-血清型A型)
1月11日 韓国(血清型A型) ネパール
1月14日 韓国(Pocheon-抱川-血清型A型)
1月15日 中国(血清型A型)
1月16日 韓国(血清型A型)
1月19日 韓国
1月23日 中国(血清型A型)
1月28日 オランダ トルコ(血清型O型)
1月31日 韓国
2月02日 モンゴル・ロシア国境(血清型O型)
2月13日 台湾
2月17日 台湾(血清型O型)
3月01日 ヴェトナム(血清型アジア1型)
3月02日 中国(血清型O型)
3月05日 キリギスタン
3月18日 中国 (血清型O型)
3月23日 韓国(血清型A型)解決宣言
3月29日 シンガポール・ヴェトナム・中国
4月08日 韓国
4月09日 中国 (血清型O型)
4月10日 韓国 (血清型O型)
4月12日 中国 (血清型O型)
4月13日 中国 (血清型O型)
4月14日 台湾 韓国 (血清型O型)
4月16日 中国 中国
4月20日 日本 (血清型O型)
4月24日 日本 (血清型O型)
韓国(血清型O型)
4月28日 日本(血清型O型)
4月29日 韓国(血清型O型) 日本(血清型O型)
4月30日 中国(血清型O型)
5月01日 韓国(血清型O型)
5月03日 韓国 (血清型O型)
5月04日 中国(血清型O型)
5月06日 モンゴル (血清型O型)
5月07日 中国(GUANGXI) 日本 (血清型O型)
5月08日 中国(Zhongpin Inc) 韓国 (Cheongyang.血清型O型)
「中国、香港、韓国、台湾における口蹄疫の発生状況地図(2009年1月~)」もご参照
参考4.これまでの感染経緯
○4月20日
1例目宮崎県都農町(牛16頭)
○4月21日
2例目川南町(酪農・肉用牛複合65頭)
3例目川南町(肉用牛118頭)
○4月22日
4例目川南町(肉用牛65頭)
○4月23日
5例目川南町(肉用牛75頭)
6例目都農町字水洗(水牛42頭、豚2頭)
○4月25日
7例目川南町(肉用牛725頭)*
○4月28日
8例目川南町(肉用牛1,019頭)*
9例目えびの市大字島内(肉用牛275頭)*
10例目川南町宮崎県畜産試験場川南支場(豚486頭)
○4月29日
11例目川南町(乳用牛50頭)
○4月30日
12例目川南町(豚1,429頭)
○5月1日
13例目川南町大字豊原(豚3,882頭)
○5月2日
14例目川南町大字平田(豚299頭)
15例目川南町大字川南(肉用牛424頭)
○5月3日
16例目川南町大字川南(肉用牛4頭)
17例目川南町大字平田(肉用牛37頭)
○5月4日
18例目川南町大字川南(豚15,747頭)
19例目川南町大字川南(豚3,010頭)
19例の内訳 豚6例、牛12例、水牛1例
○5月5日
20例目川南町大字川南(母豚106頭、種豚33頭、肥育豚8頭、育成豚57頭、子豚576頭)
21例目川南町大字平田(母豚52頭、種豚3頭、肥育豚484頭、育成豚4頭、子豚136頭)
22例目えびの市大字島内(母豚45頭、種豚5頭、肥育豚2頭、育成豚2頭、子豚266頭)
23例目川南町大字川南(母豚333頭、種豚22頭、育成豚2頭、肥育豚2,146頭、子豚1,195頭、哺乳豚736頭)
○5月7日
24例川南町大字川南(母豚 76頭 種豚 4頭 育成豚 7頭 肥育豚 250頭 子豚 350頭)
25例川南町大字川南(母豚 300頭 種豚 6頭 育成豚 43頭 肥育豚 3,420 子豚 452頭)
26例川南町大字川南(母豚 305頭 育成豚 61頭 子豚 400頭)
27例川南町大字平田(繁殖牛 16頭 子牛 13頭)
28例川南町大字平田(繁殖牛 18頭 育成牛 2頭 子牛 10頭)
29例川南町大字川南(母豚 250頭 種豚 18頭育成豚 20頭 肥育豚 2,800頭 子豚 400頭)
30例川南町大字川南(繁殖牛 24頭 育成牛 8頭 子牛 18頭)
31例川南町大字川南(母豚 60頭 種豚 5頭 子豚 342頭)
32例川南町大字川南(母豚 93頭 種豚 2頭 育成豚 6頭 肥育豚 460頭 子豚 450頭)
33例川南町大字川南(母豚 14頭 種豚 16頭 育成豚 24頭 肥育豚 4頭 子豚 83頭)
34例川南町大字川南(搾乳牛 33頭 育成牛 6頭 子 牛 11頭 肥育素牛 25頭)
35例川南町大字川南(肥育豚 2頭)
36例川南町大字川南清水(繁殖牛25頭 育成牛2頭 子牛19頭)
37例川南町大字川南(母豚1,043頭 種豚3頭 肥育豚3,024頭 子豚962頭)
38例川南町大字川南(母豚541頭 種豚13頭 肥育豚2,857頭 子豚2,995頭)
39例川南町大字川南(子豚1,906頭)
40例川南町大字川南(繁殖牛11頭 子牛7頭)
41例川南町大字平田(繁殖牛35頭 育成牛5頭 子牛27頭)
42例川南町大字川南(肥育豚640頭)
43例川南町大字川南(乳牛 搾乳牛53頭 育成牛25頭 黒毛和種 育成牛9頭 子牛10頭)
○5月8日
44例川南町大字川南(母豚 76頭 種豚 3頭 育成豚 8頭 頭肥育豚 519頭 子豚 57頭)
45例川南町大字川南(乳牛 搾乳牛 27頭 育成牛 3頭 子牛 8頭 黒毛和種 繁殖牛 12頭 子牛 13頭 交雑種 3頭)
46例川南町大字川南(搾乳牛 8頭 子牛 1頭)
47例川南町大字川南(肥育牛 691頭)
48例都農町大字川北(繁殖牛 30頭 肥育牛 162頭 子牛 15頭)
49例川南町大字平田(肥育牛 186頭)
○5月9日
50例川南町大字川南(母豚137頭 肥育豚205頭 子豚71頭)
51例川南町大字川南(母豚55頭 種豚2頭 肥育豚455頭 子豚101頭)
52例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛11頭 子牛6頭)
53例川南町大字川南(交雑種 肥育牛97頭)
54例川南町大字川南(乳用牛 搾乳牛81頭 育成牛23頭 肥育牛3頭 子牛13頭 黒毛和種 子牛6頭)
55例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛8頭 育成牛1頭 子牛6頭 )
56例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛2頭 子牛2頭)
○5月10日
57例川南町大字川南(母豚 65頭 種豚 5頭 育成豚 4頭 肥育豚 632頭 子豚 85頭)
58例川南町大字川南(肥育牛 100頭 黒毛和種 44頭 交雑種 50頭 乳用種 6頭)
59例川南町大字平田(黒毛和種 繁殖牛 9頭 子牛 7頭)
60例川南町大字川南(母豚 561頭 種豚 21頭 育成豚 51頭 肥育豚 6,353頭 子豚 917頭 )
61例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 5頭 子牛 4頭)
62例川南町大字平田(黒毛和種 繁殖牛 8頭 子牛 7頭)
63例川南町大字川南(黒毛和種 肥育牛 100頭)
64例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 26頭 肥育牛 5頭 子牛 19頭)
65例川南町大字川南(乳用牛 搾乳牛 33頭 育成牛 8頭 子牛 8頭)
66例川南町大字川南(黒毛和種 肥育牛 645頭)
67例川南町大字川南(母豚 190頭 種豚 20頭 肥育豚 2,250頭 子豚 360頭)
○5月11日
68例えびの市大字島内(黒毛和種 肥育牛 18頭)
69例川南町大字川南(肉用牛肥育 20頭(繁殖牛10頭、育成牛1頭、子牛9頭))
70例川南町大字川南(養豚153頭(繁殖豚5頭、肥育豚123頭、子豚25頭))
71例川南町大字川南(酪農114頭(搾乳牛73頭、子牛41頭))
○5月12日
72例都農町大字川北(黒毛和種 繁殖牛 12頭)
73例川南町大字川南(黒毛和種 肥育牛 41頭 交雑種 肥育牛 247頭)
74例川南町大字川南(母豚 93頭 種豚 8頭 育成豚 17頭 肥育豚 701頭 子豚 279頭)
75例川南町大字川南(肥育豚 156頭)
76例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 32頭 肥育牛 1頭 子牛 17頭)
○5月13日
77例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 25頭 子牛 24頭)
78例川南町大字川南(乳用牛 搾乳牛 52頭 育成牛 10頭 子牛 15頭 肥育牛 10頭 黒毛和種 繁殖牛 5頭 子牛 4頭 交雑種 肥育牛 11頭)
79例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 5頭 子牛 4頭)
80例川南町大字川南(肥育豚 180頭)
81例川南町大字川南(母豚 22頭 種豚 3頭 子豚 180頭)
82例川南町大字川南(母豚 59頭 種豚 6頭 育成豚 4頭 肥育豚 283頭 子豚 388頭)
83例えびの市大字島内(黒毛和種 母牛 24頭 育成牛 3頭 子牛 19頭)
84例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 19頭 子牛 17頭)
85例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 44頭 育成牛 4頭 子牛 28頭)
86例川南町大字川南(黒毛和種 繁殖牛 5頭 育成牛 1頭 子牛 3頭)
以下あまりに発生数が多くなりすぎ、記載を省略します。以降は、以下のサイトをご参照ください。
参考-「宮崎県口蹄疫に関する情報提供> これまでのプレスリリース」
「口蹄疫発生マップ」
「宮崎県-これまでの対応状況について」
「宮崎県における口蹄疫の発生事例の防疫措置の状況」
追記-ワクチン接種された家畜が殺処分されることの根拠法
家畜伝染予防法では第16条(と殺の義務)で患畜、疑似患畜について『と殺指示書』、ワクチン接種は第31条の規定(都道府県知事)で家畜防疫員に行わせる。ワクチンは法第49条の規定で農水省が譲与貸与。
口蹄疫対策緊急措置法第二章 口蹄疫のまん延を防止するための措置、第六条(患畜等以外の家畜の殺処分等)都道府県知事が(患畜及び疑似患畜を除く。)を所有する者に、期限を定めて当該家畜を殺すべきことを勧告。
ワクチン接種された家畜は、家畜伝染予防法の段階では、患畜及び疑似患畜を除くグレーゾーンの動物、口蹄疫対策緊急措置法第八条で殺すべきことを勧告される。
ワクチン接種は法第31条の規定で都道府県知事が行わせることができるが、処分は、第16条(と殺の義務)ではなくて、都道府県知事が口蹄疫対策緊急措置法第八条で、殺処分
家畜伝染予防法31条の段階では、都道府県知事が指示するワクチン接種については、接種後、生かすワクチン接種と接種後殺処分するワクチン接種が混在している
(患畜と擬似患畜を除く家畜が)口蹄疫対策緊急措置法第八条で殺すべきことを勧告」したものについて、緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができる。
参考 日本政府が2009年3月にOIEに提出した口蹄疫に関する意見部分抜粋
3. Foot and Mouth Disease (Annex XXXV)
Specific Comments on Article 8.5.5 bis
Japan suggests that the Commission not apply the concept of disease free compartment to FMD in the Code.
(Rationale)
FMDV is highly contagious and can spread by air-borne infection, and there is no appropriate scientific evidence which ensures that the proposed requirements for a FMD free compartment are sufficient.
Even if there are to be a FMD free compartment, there is currently no practicable or economically feasible biosecurity measures available. The Commission should keep the article under study until it obtains sufficient scientific knowledge on biosecurity measures for FMD free compartments and is ready to develop a common guideline acceptable for both importing and exporting countries.
It should be noted that the Code Commission itself mentioned that the OIE should not proceed to grant official recognition of FMD free compartment until the practical implementation of the concept for compartment of avian influenza and Newcastle disease would be studied in detail.